「旅猫リポート」

 2017-04-10
最初は文芸春秋から、続いて講談社から単行本が刊行され、その後、一部の難読漢字をひらがなにし、総ルビを振って児童書レーベルでの発売となった、有川浩の『旅猫リポート』が、今回、「本館」更新前に紹介する読了本。
ちなみにその後に通常の文庫にもなっている本作なのですが、私が買ったのは、それよりも前に出ていたこの青い鳥文庫版なので(つまり、それだけの間、積読状態になっていたということでもあります)、以下は、それを前提として描かせていただきます。

実のところこの作品については、村上勉の挿絵のイメージもあって、有川浩が典型的な児童小説を書いたんだなと、どうせ猫と少年の一夏の旅的な話なんだろうなと思って、あまり触手が動いていませんでした。
が、実際に読んでみると、そういう私の予想とはちょっと違っていて、これは、なかなか面白い。

とある事情から愛猫を飼えなくなってしまったサトルと、その飼い猫であるナナ。
彼等が新たなる飼い主候補のところを廻るという物語は、前述の通り、作品タイトルと表紙イラストから予想してたものとはちょっと違っていましたが、ペットと飼い主の交流を、ペット側の視点から描く、という基本認識はズレていませんでした。
この旅を通じてサトルは各年代で出会ってきた友人達と会って旧交を温め、ナナはサトルと友人との会話などから、サトルのこれまでの人生を振り返ることになる、というのが本作の仕掛けです。
完全に児童向けかどうかと問われると、若干、どうかなと思う部分もあるのですけれども、しかし概してこれは、児童文庫化する価値のある作品だと感じました。

ベタに徹しているようなストーリーはいかにも有川浩らしいもの。
それはありきたり過ぎてつまらないということに繋がりかねないのですが、しかしこういう題材だとそのベタさは実に有効に働きますね。
一歩間違えば感動の押しつけに堕すところを、微妙なところで踏みとどまることができていますし。

こういう作品を十代前半の少年少女に読んでほしいというのは、出版側の好判断、だと思います。



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2017年冬クール 終了アニメ雑感

 2017-04-08
番組の改編期にはいつも、全話の放送が終了したアニメのざっくりとした感想を書くことにしています。
そんな何か特別なことを書くわけでも無く、通り一遍のことしかなかったりしますけれども、ともあれ、今回もその流れのままに、いくつかの番組を採り上げてみます。

1) 三月のライオン

とりあえず、第2シーズン制作決定、おめでとうございます。
この作品が2クールでアニメ化されるということを初めて聞いた時に、どこで話を切るのかと色々と予想が出ていたわけですが、まずまず、いいところで一旦の終わりとできたのではないでしょうか。
最終話の後半に、コミックス10巻発売時に行われた、(羽海野チカが長年のファンなのだという) BUMP OF CHIKEN とのコラボ企画で書下ろされたエピソード 「ファイター」 を持ってきたというのも、制作サイドの好判断だったと思っています。
将棋を通して主人公の成長を描くこの作品の締めくくりとして、まさにピッタリかな、と。
第2シーズンの話が第1シーズンに輪をかけて重くなるのは原作の内容から確定的ですけれど、色々とホッとさせられるシーンもありますし、この第1シーズンのシャフトの仕事ぶりを観る限り、しっかりしたものを作ってくれるであろうと思われるから、ここは、安心して楽しみに10月からの第2シーズンを待つだけですね。

2) 亜人ちゃんは語りたい

特にどうしても観たいということではなく、完全に「何となく」第1話にチャンネルを合わせた作品です。
どうせよくある萌え作品だろうと想像していたのとはちょっと方向性が違っていて、なかなか面白かったので、そのまま最終話まできっちりと追いかけることとなりました。
人それぞれの個性、差別(or いじめ)、理解、そういったものをやんわりと扱っているわけですけれども、むやみにシリアスになることなく、それでいて焦点がぼけてしまうこともなく、程よい按配でまとめているのが、いいですよね。
その分、深いところまで突っ込めていないじゃないか、中途半端ではないのか、という声も、あるいは出てくるのかもしれませんけれども、そういうところまでをやろうとしている作品じゃないですよね、これ。
あくまでエンターテインメント、あくまで娯楽作品に、何気ない日常系のゆるいテイストで。
そしてそこに、ちょっとだけの問題意識を混ぜる。
今回のクールで、一番、望外に良かったのは、あるいはこれかもしれません。

3) 機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ

色々と批判の声もありますが、まぁ、こうなるだろうなと思われたところに落ち着いたエンディングだったと思います。
鉄火団が成功するという姿はちょっとあり得なかったので、最後が破滅というのは順当な成り行きではありましたが、それでもハッピーエンドを求めた視聴者も多かったのかな……?
細部をつつきだすと、そこに至るまでの経緯も含め、色々な突っ込みどころが多い物語だったのは確かですけれど、おおむね、収まるところに収まった最終話だったと言えるのではないでしょうか。
ずば抜けた傑作だとはちょっと言えませんけど、悪くない作品でした。

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DAZN の限界

 2017-04-04
イタリアでのレースやフランドルでのクラシック、そしてスペインでの一部レースなどの自転車クラシックの放映権をスポーツ動画ネット配信の DAZN が取得して、その為に J-SPORTS ではそれ等が放送されない、ということになった2017年。
以前のエントリにも書いたように、日本語の解説が無いとか、色々な不満が無いわけではありませんけれど、それでも、レースを観られないよりはずっといいので、ある意味ではありがたいことだなと思って、試聴させていただいていたわけですが……

4月2日、北のクラシックのハイライトの1つ、ロンド・ファン・フラーンデレン(ツール・デフランドル)の配信を、DAZN はやってくれませんでした。
DAZN のサーバーも万能ではないのだから、一度に配信できるコンテンツ数に限度があることは、理解できます。
そして、放映権を有するコンテンツが重なった場合には、その中で、試聴数を稼げる人気コンテンツを優先していくであろうことも、商売である以上は、仕方のないことです。
頭では、それは分かっているのですが、それでも、ロンドの放送が無かった、観ることができなかったというのは、かなりショックです。
自転車ロードレースのファンの数が、Jリーグやプロ野球に勝てなかった、というのが全てであって、それ以外の何物でもないわけであり、DAZN を恨んだりするのは筋違いではあるのですが、自分のところで配信できないだろうと分かっているのであれば、J-Sports にサブライセンスを与えてくれていれば、確実に、生中継で放送していただろうにと思えば、やはり、残念であり、悔しくもあり、という感情が渦巻いてしまうのは止められません。

ちなみに、今年のロンドを制したのは、クイックステップ・フロアーズ所属のベルギーチャンピオン、フィリップ・ジルベール。
自身の選手生命もかける覚悟で、年俸ダウンも構わず、BMCレーシング から自ら志願してのクイックステップ移籍だという話もあったベテランが、何と55キロの距離を独走しての、ロンド初制覇を成し遂げたとのこと。
感極まってロードバイクを頭上に持ち上げながらゴールラインを切ったという記事もありましたし、うーん、このレースはやはり中継で観たかったなぁ……

後追い配信でもいいから、DAZN、流してくれないかな。
ジロ・デ・イタリアをどうするのかという問題はありますが、ロンドの配信が無かったことで、解約の方向にかなり気持ちが傾いている現状ですけれど、それがあれば、話は別、になりそうなんですが。


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「となりの革命農家」

 2017-04-01
それが作家としての1つのテーマになっているのかどうかは、分からないのですが……
以前に紹介した 『限界集落株式会社』 とその続編である 『脱・限界集落株式会社』 同様、現代日本の農村(及び農業)の置かれている状況と、その抱える問題の解決策の模索を題材にしているのが、黒野伸一の 『となりの革命農家』 を、今週は紹介します。

今回のネタは、従来よりある農薬を使う慣行農法から有機農法への転換と、異業種からの農業法人参入のあるべき姿とは、というところでしょうか。
その為、Y県大沼市を舞台にした物語は大きく2つの視点、2人のキャラクターを中心に進んでいきます。
まず、農家の家に生まれてお決まりのように一度は東京に出たもののそこでの生活に馴染まずに帰郷、今は道の駅で販売員をしている小原和也。
彼は自分で作った野菜を直売場で売ってくれないかと持ち込みをしてきた少女と出会い、その彼女と共に有機農法に取り組むことになります。
続いて、大沼氏に進出した農業生産法人アグリコ・ジャパン部長の上田理保子。
親会社である東日本フーズでは大学を卒業して就職をしてからわずか3年で役付きになるなど異例の出世をしていた彼女は、自分の上司である常務と専務との社内の権力抗争に巻き込まれる形でアグリコ・ジャパンに出向することになったのですが、赤字続きのここを黒字化して実績を築き、晴れて本社に呼び戻された暁には、自分を追い出した元専務の社長に辞表を叩きつけてやろうということを、その野望としています。
やがて大沼市に、Y県の主導で農業用水路の整備と農道の拡張を行おうという公共事業の話が持ち上がって……というのが、物語の流れです。

水路整備と農道拡張ですから、通常でしたらむしろ農業の効率化や生産量の増加に繋がる話です。
もちろん用地買収などで問題が全く無いとは言わないものの、一般的に、全体としてはその地域にとってはむしろ良い効果が見込まれることだと言えるでしょう。
しかし、それでは物語が盛り上がらない。
ですので、当然この公共事業の裏側には表沙汰にできない本当の目的だったり、利権や汚職だったりといったものが絡み合って来て、そこが本作のヤマ場になります。
その辺の詳しいことは(バレバレな気もしますが)ネタバレ防止の為にここでは書かないでおきますけれど、ベタながらも、いい感じの物語で、適度な恋愛要素も盛り込まれていてエンタメ小説として押さえるべきところは押さえており、面白く読ませてもらいました。

ただ、難が無いわけでは、ありません。
ネタとして浮かんだものを一つの物語に上手く組み上げたとは思いますし、農業法人による大規模農業との比較として個人農家による有機農法を持ってくるのは分かるのですが、作品中で、それぞれがそれぞれに別の物語を描いていて(乖離しているとまでは言わないものの)今一つ合流しない感があるのは、残念です。
そこら辺がもっと上手く消化できていれば、更にいい作品になったのにな、と思いました。



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ヘント~ウェヴェルヘム 2017

 2017-03-28
26日の日曜日、ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ の最終ステージがゴールした直後くらいから、DAZN ではフランドルのクラシック、ヘント~ウェヴェルヘムの中継も始まりました。

カタルーニャ が今年のツール・ド・フランスを占う1つの指標となるレースだったとすれば、こちらは、ツール・ド・フランドルとパリ~ルーベでの、トム・ボーネンの走りを占う指標です。
とはいえ、そう言い切ってしまうのは、他の選手に申し訳ないのですけれど……
ここは、私の興味が主にどこに向いているのかということなのだなと、そんな風に解釈していただければ幸いです。

さて、それでは今年のヘント~ウェヴェルヘムがどうなったか。
最終的には、ここぞという場面で集団から抜け出した2名の逃げ切り勝利と言っていいでしょう。
オリカ・スコットのイェンス・ケウケレールとのスプリント合戦を制して勝利を手にしたのは、BMCレーシングの ファン・アーベルマート。
3位には、追走で集団から抜け出した3名の頭を獲った、ボーラ=ハンスグローエのピーター・サガンが入っています。

トム・ボーネンのいるクイックステップ・フロアーズは、サガンの追走にニキ・テレプストラが反応したものの、最後のスプリントでサガンには勝てず、表彰台に選手を送り込むことができませんでした。
もちろん、いくら地元のレースだからといって、常に3位以内に選手を送り込めるわけもないわけですから、これも勝負の結果、なわけですけれども。


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