「シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱」

 2017-03-04
今回、「本館」に先がけて紹介する読了本に選んだ高殿円の 『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』 は、ホームズ作品の時代設定を現代に変えて描くという趣向のドラマ 『SHAROCK』 が好きな作者が、その女性化版を書こうと思って執筆した作品だとのこと。

第二次アフガン戦争帰りだったジョン・ワトソンは、タリバンとのアフガニスタン紛争帰りの女医ジョー・ワトソンになりましたが、負傷してロンドンに帰ってきた後に知人の紹介で、警察からの捜査依頼を受けて犯罪捜査などを請負う「顧問探偵」をやっているというシャリー・ホームズと同居をすることになるという流れは、本家のシャーロック・ホームズをなぞったもの。
そうして知り合ったシャーリーが、スコットランドヤードからの依頼で事件の謎を解決していくところをジョーが見る、というのが、今作の内容です。
これは、タイトルからも一目瞭然のように、ホームズシリーズの処女作である「緋色の研究」へのオマージュになっていますよね。
そこに、どのようにオリジナリティーを加えていくかが、こういう作品の見所の1つでもあるでしょう。

ラノベっぽさが前面に押し出されているのが本作の特徴で、発表媒体こそ、雑誌 『ミステリマガジン』 というガチのミステリー王道を行っていますが、内容的にはかなりラノベチック。
それは本作が、あくまで 『SHAROCK』 の女性化版であって、コナン・ドイルのホームズ物の女性化版ではない、というところからくるテイストの違いとか、シャーリーが、作中でまさに開催されている最中の2012年ロンドン五輪において、馬術競技で金メダルを獲得していたりすることとか、シャーリーやホームズの抱えている過去とか、そういうところのアレンジ、キャラクター付けが、ラノベっぽいんですよね。
といっても、萌え系のハーレムものだったり俺TUEEE系というようなことではなくて、どちらかというと古き良き少女小説やジュヴナイル小説の匂いが残っているような感じかもしれません。

とはいえ、萌え的なものを目指して書かれたわけではないから、そこに萌えが認められないかというと、それとこれとは全くの別問題ですよね。
本作、そういう目で読めば、シャーリーとジョーとの関係のライト百合的なものを楽しむことができますし、レストレード警部もホームズの兄のマイクロフトもモリアーティ教授も女性化されているので、妄想を広げようと思えば、そこも可能でしょう。
更に言ってしまえば、シャーリーもジョーも既に成人している20代後半の女性なのですが、ノリにどこか学生的なものが感じられたりもするのは、これもまた、ラノベ的なところでしょうか。

 シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱
 (2016/12/20)
 高殿 円
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日曜から、始まります

 2017-03-03
J-Sports による 2017年の自転車ロードレース放送。
今年初めての生中継となるのは、フランスのパリ郊外から地中海のリゾート都市ニースを目指す1週間のステージレース、パリ~ニースです。
この大会が、今年も今度の日曜から始まります。

とはいえ、仕事が1年で一番の大ヤマ場を迎えていますから……
実際には、夜に行われるこの中継をじっくり楽しめるほどの体力もなかなか残っていないんですよね。
だから、観ながら寝落ちしてしまったり、場合によっては放送開始を待たずに布団に入ってしまったりと、そんな感じになってしまうこともあるのが毎年の常だったりします。
それでも、待ちに待った春のレースの時期が、いよいよ到来したという喜びは沸き立っています。

この辺は、プロ野球ファンやサッカーファンの方には、要するに開幕が到来したんだなと考えてもらえれば、「ああ、そういう感じね」と理解していただけるかも。
そう、そういう感じなんですよ。
ここから春のクラシックレースの辺りは、私にとっては自転車ロードレースの最初のヤマ場。
できるかぎり、寝落ちなどをしないで、バッチリと放送を観戦したいと思っています。
まぁ、仮に意識がはっきりとしていて目が覚めていたとしても、どうしたって、他のことをやりながら、中継も観ていくという、「ながら」状態になってしまいそうなくらいに、やらなくちゃいけない事も多く抱えていたりするのですが……

個人的には、クイックステップ・フロアーズの若きエースであるジュリアン・アラ・フィリップとか、トレック・セガフレードのアルベルト・コンタドールといった辺りの選手の走りに注目したいところ。
もちろん、その他の選手にも、是非とも素晴らしいレースを作り出してほしいと思っているのですが。


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ポートとユアン

 2017-03-01
オーストラリアのアデレード周辺を舞台にして、約1週間にわたって行われたステージレース、ツアー・ダウンアンダー。
残念なことにダイジェストの録画放送ではありますが、今年の自転車ロードレース放送の始まりを告げた、この大会の放送も、先週末に終わりました。

南半球で行われるシーズン序盤のレースだけあって、多くの選手がこれをシーズンインにおける調整の為のものと位置付けているわけですけれど……
ここに出走している地元オーストラリアの選手にとってみれば、自国で最大級のこのレースでのステージ勝利や総合優勝の座は、大いなる名誉になることであり、どうしても欲しいものです。
だから、今年の大会でも活躍したのはオージー選手。

ステージでのスプリント勝利を量産したのは、オーストラリア期待の小柄な若手、オリカ・スコットのカレブ・ユアン。
初日のクリテリウムを含めると7レースで5勝です。
スプリントのあるステージは全て制したわけで、ピーター・サガン等を破ってのステージ勝利は高い将来性を示したと言えますが、しかし、先に触れたようなコンディションのピーキングの問題もあるので、これだけで、彼がサガンを超えたと言うのは無茶というものでしょう。
サガンは総合のアシストなんかもしていて、そちらでも体力を使っている、というのも、あるかもしれませんし。

総合優勝は、グラン・ツールでも上位を狙える選手、BMCレーシングのリッチー・ポートが獲得しました。
これが初のツアー・ダウンアンダー総合優勝だというのはちょっと意外でしたけれども、実力を考えれば、この結果は意外でもなんでもありません。

総じて、今回のツアー・ダウンアンダーは、出走選手の名前を観た時点で、こうなるだろうなと事前に予想していた通りになったという印象です(ただし、ユアンがここまで勝つとは、思っていませんでしたが)。
そういう期待を裏切らずに結果を出してくるのは、高い実力があればこそできること、ですよね。

これから他の選手も徐々に調子を上げてくるはずで、春のクラシックシーズンではどうなってくるのか、これは、今年も非常に楽しいことになってきそうです。

ツアーダウンアンダー 2017 コースマップ

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「泣くなブタカン! ~池谷美咲の演劇部日誌~」

 2017-02-25
今週紹介する、青柳碧人の『泣くなブタカン! ~池谷美咲の演劇部日誌~』は、シリーズ3冊目にして最終巻。
非常にざっくりと内容を説明するならば、前2作品で強烈な個性を放っていた早乙女先輩たちが卒業し、最高学年の3年生になった主人公の演劇部生活を描く内容となっています。

ちなみに今回は、帯にも背表紙のあらすじ紹介にも「青春ミステリ」の文字がありませんでした。
全4章のそれぞれが軽く謎解きの形式にはなっていて、一応「日常の謎」系と言えなくもないかな、という感じではあるものの……
作中に読者に必要十分なヒントを与えて、真相を独自に推理することを可能にしておくというミステリーの文法から考えると、これをミステリーだと言うのはさすがにちょっとアレかなという判断がなされたのかも。

とはいえ、そのことと本作が面白いか面白くないかということの間には特に関連性はありません。
青春部活モノとしてはきっちりと楽しませてくれましたし、個人的にはもともと第1作目からこれをミステリーと称することには疑問を持っていたというのもあって、その辺は、まぁそうなるよね、という感じです。

ストーリーを読者に楽しませる、という点ではしっかりしている本作。
私が今回一番評価したいのは、高校生活と部活道との結末を、よくあるような美辞麗句的なものに終わらせず(そういう作品は、それはそれで好きなのですけれど)、そこに一定のリアリティーを持ち込んできたことです。
具体的に書くのはネタバレにもなるので本来は避けるべきではありますが、そこを敢えてちょっと触れるとするならば、例えば大学受験と部活動のどちらを優先すべきかとか、高校卒業後も演劇を続けようとする人間がどれくらいいるのかとか、そういった話。

もともと出だしからして、いくら高校演劇とはいえ、経験の全く無かった人間が突然舞台監督なんて重要な仕事をこなせるものだろうか、というリアリティー欠如に関する疑問を内包して始まっているシリーズでしたけれども、それも、このラストで差引プラスになった、かな?

 泣くなブタカン!
 ~池谷美咲の演劇部日誌~

 (2016/11/28)
 青柳 碧人
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「ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」

 2017-02-21
何かと仕事が忙しい時期になってきているのですが、休日返上で出勤しなければならずに、本当に身動きができなくなるくらいバタバタするようりも前に行ってしまおうと、公開されたばかりの映画 『ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』 を観てきました。

原作読者、またはTVアニメの視聴者だけをターゲットにして作品を作る場合に楽なのは、舞台設定や状況説明、キャラ紹介などが一切いらず、いきなり本題に入れるというところにありますよね。
とはいえ、それは逆に言えば初見を全く切り捨てることにもなってしまうわけですが、まぁ、SAO くらいの人気であればそれで問題ない、という判断なのでしょう。
それはそれで、アリだとは、思います。
問題は、これまでの物語の中でのサブエピソードというようなものでは無いような新規のエピソードを持ってきて、それを映画の枠内でちゃんと物語として語りきれるのか、というところで、そこが、私が劇場に行く前に一番危惧していたところでした。
中途半端に駆け足のモノを見せられても、それは嫌だな、という。

で、実際の映画がどのようになっていたのか、です。
ネタバレにならないように軽く説明をすると……上手く綺麗にまとめてきたな、というか、思っていた以上に、物語としてきっちりと成立している作品でした。
もちろんそれは前述のように、TVシリーズにおいて基本的なことが語られているからこそ可能になったことであって、だからこそ2時間程の上映時間内に一通りのストーリーを、ダイジェストのようにならずに入れきることができた。
とはいえ、全くの新規でエピソードを組み立てようとしたならば、それはやはり難しい。
そこを考慮した結果なのかどうか、というのは分からないのですが、今回の映画は、これまでTVで放送されてきた3部の全て、特に第1部の内容にかなり密にリンクしていて、細かい説明はそれ故にパスされる、というような構造になっています。
それは半面、私が当初予想していたよりも、一見さんお断りな性格が強かったということでもあります。
これから本作を観に行ってみようかな、ということを思っているような人は、ですから、その点は事前に了承しておいた方がいいでしょう。

それを分かった上で観るのであれば、この 『ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』 は、画は綺麗で演出もいいですし、アニメーションとしての出来は非常に高い良作である、と言えると思います。
特に、シリーズのファンだという人であれば、間違いなく大満足できるはず。

エンドクレジットの後のオマケ部分は、SAOというシリーズとしては、今後の展開もあるのか、と期待させるという点で、アリです。
まぁ、それが実現化しなければ、1本の映画としては無用の蛇足だ、という側面の方がクローズアップされることになってしまうのでしょうが、それは、これからの動きを見ていかなければ分かりません。


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