『PROJECT ITOH ARCHIVES』

 2010-03-25
2007年6月に早川書房から『虐殺器官』という長編でデビューした、伊藤計劃(いとうけいかく)という新人SF作家がいました。

「いました」と書くしかないことが非常に残念でならないのですが、彼は、そのわずか1年9ヵ月後の昨年3月に、肺癌によりこの世を去ってしまっています。

残されたのは、上記の『虐殺器官』の他は、ゲームのノベライズ小説『メタルギア ソリッド』(角川書店)と、オリジナル第2長編である『ハーモニー』(早川書房)。
雑誌『SFマガジン』に発表した中編が2本。
同人誌に発表した短編が1本。
そして、絶筆となった、第3長編になるはずだった、「屍者の帝国」の出だし部分の試し書きという、わずかな数の作品。

ほんの短い時間の作家活動にも関わらず、しかし彼の作品は、私を初め、それを読んだ者の中に、非常に鮮烈な印象を残しました。

発売直後に『虐殺器官』を読んだ段階の私は、口では、まだこれからの作家だし、今後の作品を読んでから評価すべきだろう、なんて言っていました。
しかしその実、心の中では、こりゃあ、凄い新人、今後、大きく化けそうな新人が出てきたぞ、と、膨らむ期待を抑えきれずにいたのです。
この作家の新作は、欠かさずに購入し、追いかけていかなければならない、と思っていました。

今のこの世界に生きる作家の1人として、その世界の在り様を作品に大きく取り込み、彼が処女作『虐殺器官』で描き出したモノ。
そこから更に踏み込んで描かれた『ハーモニー』。
もっと彼の作品を読みたかった。
この先に伊藤計劃という作家がどのような地点を目指すのか、到達してくれるのか、それを見届けたかった。
しかし、それは、一本の訃報により、絶対に叶うはずのない夢となってしまったのです。

それでも、いや、それだからこそ、残された彼の作品は全て手元におき、何度も繰り返し、細部まできっちりと読み込みたい。

そう思ったのは私だけではなかった。
そういうことなのでしょう。

単行本になっていなかった短編・中編のほか、エッセイ、インタビュー、対談、そしてデビュー前に個人サイトに掲載していた映画評の抜粋、そういったものを1冊の単行本にまとめたもの。
それが、『伊藤計劃記録』(早川書房)です。

本当に、よくぞ、これを出版してくれた……。
私にとっては、彼のほかの著作と同様に、間違いなく永久保存版となる書籍になります。

伊藤計劃記録伊藤計劃記録
(2010/03/19)
伊藤計劃

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