FC2ブログ

「このぬくもりを君と呼ぶんだ」

 2020-07-26
悠木りん の『このぬくもりを君と呼ぶんだ』は、第14回小学館ライトノベル大賞で優秀賞を受賞したという、作者のデビュー作品。
担当編集が「これがガガガ文庫の『百合×SF』の最前線」であると言い切った本作の、裏表紙に印刷された粗筋は、こんな感じになっています。

偽物の空、白々しい人口太陽。全てがフェイクの地下都市で、リアルな「何か」を探している少女レニーが出会ったのは、サボリ魔で不良少女のトーカ。レニーは彼女に特別「何か」を感じ、一緒の時間を過ごすようになる。ある日、レニーの前に空から赤く燃える小さな球体が。それを『太陽の欠片』と名付けたレニーは正体を調べる。一方でトーカにも変化が……。ずっと続くと思っていた二人の日常は音を立てて崩れ始め――。第14回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞。ガールミーツガールから動き出す青春SFストーリー!


なる程、これは確かに間違いのない「SFで百合」な作品、ですね。

環境破壊により地上に住めなくなった人類が地下都市で生活しているという本作の設定は正直、かなりベタなものです。
そこで描かれる少女達の葛藤もオーソドックスであって目新しさや驚きといったものはありません。

しかし、十代の悩みとして良くある、普遍的なものがテーマになっている青春小説にはいつの時代もニーズがありますし、それを百合SFに落とし込んだというところが、本作の個性だとは言えるでしょう。
それを唯一無二の、とまでは評せないにせよ、今の時代に合ったテーマと設定、ジャンルであることは大いに評価できるところです。

で、本作はそういう作品なので、全300ページほどの全編にわたって、レニーとトーカの感情が丁寧に描写されていくことになります。
この辺りは、個人的には読んでいて途中でダレたところが無いとは言いませんが……
しかしそれはあくまで私のリズムと文章のリズムのズレの問題に過ぎず、むしろここまで丁寧にやっているからこそいいんだ、という人もいるでしょう。
その感情の動きを踏まえたうえで(作者である 悠木りん 本人は、もしかしたら「そんなことは考えていないよ」と言うかもしれませんが)レニーは「Rainy」で、トーカは「灯火」もしくは「燈火」なのかなと思っています。
そう仮定して再度、本作における両者の関係性の推移や深まりを振り返っていくのも、結構面白かったりします。

なお、本作にはラノベに付き物の冒頭のカラー口絵が存在しないのですが、その分、実は……というのは、実際に本作を手にしてのお楽しみとしておきましょう。
キャラクター造形が少しステレオタイプすぎるのは気になるものの、いい作品だったと思います。



タグ :
コメント












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
トラックバックURL:

http://pantarheibekkan.blog110.fc2.com/tb.php/2266-7cad897a

≪ トップページへこのページの先頭へ  ≫