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「復活の日」

 2020-05-23
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、あちこちの書店の店頭に平積みにされているのが、アルベール・カミュの『ペスト』と小松左京の『復活の日』。
ちゃんと読んだことは無かったし、ここで読むべきだろうと思って、まず、『復活の日』から購入してみました。

今更敢えて私がここに書かずとも皆さん既にご存じかもしれませんが、まずは本作の裏表紙に記載された粗筋を紹介します。

吹雪のアルプス山中で遭難機が発見された。傍には引き裂かれたジェラルミン製トランクの破片。中には、感染後70時間以内に生体の70%に急性心筋梗塞を引き起こし、残りも全身マヒで死に至らしめるMM菌があった。春になり雪が解け始めると、ヨーロッパを走行中の俳優が心臓麻痺で突然死するなど、各地で奇妙な死亡事故が報告され始める――。人類滅亡の日を目前に、残された人間が選択する道とは。著者渾身のSF長編。



このMM菌が実は東西冷戦の構造の中、兵器転用を目指して研究・開発されていたモノであるというのが1つ大きなミソで、疫病によるパンデミックを題材としていることに加え、それもあるからこそ、新型コロナウイルス感染症が世界的な大流行を見せる中で、多くの人の関心を惹きつけたというのは、間違いないことですよね。
また、物語の内容、軍事機密のベールに包まれた研究所からMM菌が解き放たれるに至った後に人類社会が辿ることになる破滅への経緯は、今読んでも、というか、むしろ今だからこそ強いリアリティーを持って迫ってきます。
作品としては、MM菌の感染拡大による人類社会の崩壊と滅亡一歩手前の事態という災厄に襲われた人々が再び立ち上がって「復活」していく様を描くというより、如何にして人類社会が崩れ落ちていったのかという「経過」を描くことに重点が置かれているわけですけれど、それ故に、コロナ渦を経験して読む本作には、胸にグッとくるものがありました。
様々な人々、一般人、医療関係者、研究者、軍人、政治家、作中で描かれるそれ等の人々の言動には、コロナ問題の前であれば「確かに、そういうことにもなりかねないよな」と感じるにとどまっていたであろうことが、今や「確かに、そういう行動に出ていたように思えるな」と感じられてしまったものも。
小松左京という作家の先見の明というか事態を予測する(脳内でシミュレートする)能力の確かさ・正確さに唸らされると同時に、今から約半世紀前の1964年にこういった書籍が刊行されていたにもかかわらず、結局私達は、ここに記された現代社会のマイナス面を(程度の差はあれ)なぞってしまっただけなのではないかと、何ともいえない気分にもなってしまいます。

改めて小松左京という大作家の才能を感じるとともに、本作を未読の友人知人関係にもお勧めしたいと思いました。
他の小松左京作品も、もう一度きちんと読んでいかなければ、駄目かもしれませんね。



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