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「夏を取り戻す」

 2019-10-11
東京創元社が創立50周年を記念して、若手の作家に主に書き下ろしでミステリー長編を書かせるレーベルとして作ったミステリ・フロンティアの、記念すべき100冊目の栄誉を担うこととなった岡崎琢磨の『夏を取り戻す。

岡崎琢磨といえば『珈琲店タレーランの事件簿』シリーズという印象が私には強くて、どうしてもそこから抜け出せていません。
ですが、もちろん他にも複数の作品は発表されていますし、世間的にはどうなっているのかは私には分かりません。
『タレーラン』シリーズのイメージから脱却することができていないというのは、あくまで個人の見解です。

そんな岡崎琢磨が思いっ切り気合を入れて取り組んだ本作。他ならぬ東京創元社からの、ミステリー専門叢書のキリ番の執筆依頼ですかから、これまでの作家生活の全て注ぎ込むくらいの勢いで書かれているであろうことは想像に難くありません。
ならば、それを読むことで、私の中の岡崎琢磨像も変化するだろうか。
そんなところにも興味を覚えて本書を買ってみたという次第。

これは、もうすぐ二十一世紀がやってくる、ということに起きた、愛すべき子供たちの戦いの物語。――不可能状況下で煙のように消え去ってみせる子供たちと、そのトリックの解明に挑む大人の知恵比べ。単なる家出か悪ふざけと思われた子供たちの連続失踪事件は、やがて意外な展開を辿り始める。地域全体を巻き込んだ大騒ぎの末に、雑誌編集者の猿渡の前に現れた真実とは?いま最も将来を嘱望される俊英が新境地を切り開く、渾身の力作長編。ミステリ・フロンティア100冊到達記念特別書き下ろし作品、遂に刊行!


というのが公式の粗筋なのですが、後半の煽り文句は、これはさすがに言い過ぎなような気がしないでもありません。
「将来を嘱望され」ているかどうかはミステリー業界・出版業界の話なので私には嘘とも本当とも言えず、既発表作品をすべて読んでいるわけではないので「新境地」か否かも断言はできません。
加えて「渾身の力作」であることは間違いないので、ならばこの煽り文句は問題ないのではないかということも言えそうなのですが、何となくではありますけれども、そこまで言い切るところまでのモノはない、というような感触があるのです。

「作者の挑戦を受けて謎を解いてやるぜ」というようなミステリマニア的な読み方を一切しない私でも、子供たちの失踪のトリックについては察しがついてしまいましたし、それ以外の、ラストのどんでん返しになるような部分も早い段階で類推ができてしまったというのが、そんな風に感じたことの大きな要因の1つ。
動機も、こんなもんかな、という感じでしたし、せっかくの100冊記念作品なのですから、どうせなら、もう少しは唸らせて欲しかったなぁ、と思うのです。
決してつまらなかったわけではないものの、読み始める前の期待値の高さからすると、残念ながら、ちょっと肩すかしだったかもしれません。




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