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「東京の子」

 2019-09-13
刊行時に複数個所でちょっと話題になっていた、藤井太洋の『東京の子』。
来年開催される東京オリンピックが開催された後の東京を舞台にした作品なのですが、つまり、かなり同時代性の高い作品ということになります。
実在する技術に関係するテーマで少し先の未来を舞台にしたSFを描くことが多いというイメージ(あくまで私が抱いている勝手なイメージであって、この文章を書くにあたってこれまでに読んできた既存の作品を思い返してみたら、あながちそうとも言い切れないような気もしないでもありませんが)の藤井太洋が、そういう今ならではの作品発表した。
しかもそれが私の信頼する書評家たちからウケがいいとなれば、これはオリンピックが実際に開催される来年になる前に読んでおかなければならないのは、間違いありません。
そこで、オリンピック開幕までもう10ヶ月というこの時期になって、こうして読むことになったわけです。
そういうことならばもっと早く読むべきだろうという意見もありましょうが、まぁ、その辺は、私のテンポがそうだから、ということで。

帯に書かれていた公式の粗筋を紹介しましょう。

2023年、東京。パルクール・パフォーマーを15歳で引退した舟津怜は、戸籍を買い、過去を隠して新たな人生を歩んでいた。何でも屋として生計を立てる彼は、失踪したベトナム人、ファム・チ=リンの捜索を依頼される。美貌の才媛である彼女は、「東京デュアル」内にあるチェーン料理店のスタッフをしていた。オリンピックの跡地に生まれた「理想の大学校」、デュアル。ファムはデュアルの実情を告発しようと動いていたのだ。デュアルは、学生を人身売買しているのだという―。


パルクールが何かをご存じないという人には、ひとまずネット検索などで動画を捜して見ていただくとして……
一歩間違えれば作者の政治的主張が押し売りされるような作品になりかねないようなネタではないかと、これだけ見ると思えます。
しかし、(ご本人の政治的信条がどういうものかは分かりませんけれど)その辺りは基本的にフラットに描こうとしているように感じられ、読んでいて引っ掛かりを覚えるようなことはありませんでした。
逆に言えば、引っ掛かりを全く覚えないくらいにするすると読めてしまう事に問題は無いのか、というような話にもなるわけですけれど、そこはあくまでエンターテインメントに徹したということなのでしょう。

テーマ的には、読み手の心へのフックとなる部分が少しくらいはあっても良かったような気もしないでもありませんが、しかし、広く読者に届けようという意味では、これでいいのかもしれません。
ちょっとでも説教くさい部分や、思想的に偏りがあったりというような、「匂い」のあるものを嫌う人も多いですし。



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