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「夏へのトンネル、さよならの出口」

 2019-08-24
第13回小学館ライトノベル大賞で「ガガガ賞」と「審査員特別賞」のW受賞をしたというのが触れ込みとなっている、八目迷の『夏へのトンネル、さよならの出口』。
本作については、まず最初に公式の粗筋を紹介させていただくのがいいかなと思います。

「ウラシマトンネルって、知ってる?そこに入れば欲しいものがなんでも手に入るんだけど、その代わりに年を取っちゃうの――」。そんな都市伝説を耳にした高校生の塔野カオルは、偶然にもその日の夜にそれらしきトンネルを発見する。――このトンネルに入れば、五年前に死んだ妹を取り戻すことができるかも。放課後に一人でトンネルの検証を始めたカオルだったが、転校生の花城あんずに見つかってしまう。二人は互いの欲しいものを手に入れるために協力関係を結ぶのだが……。かつて誰も体験したことのない驚きに満ちた夏が始まる。


これを見ると、季節が夏、高校生、青春、ウラシマ効果、死んだ妹、転校生と、これでもかというくらいに定番の青春時間モノSFの定番要素を盛り込んできているという感じで、これがデビュー作なところに、随分と張り切って仕込んだなと思わされます。
あるいは逆に、これが新人賞への応募作だからこそ、出し惜しみしたりせずに思いついついたことを全て入れてきたのかもしれませんね。
それで物語が破綻してしまうようでは元も子もありませんが、本作については、その点はひとまず大丈夫でした。

となれば次は、私がそもそもこれを買おうと思った動機にもなっている、青春時間モノSFとしての出来栄えがどうなるのかが、問題となってきます。
まず1つ言えるのは、本作は事前に思っていたほどに時間モノにはなっていなかったかなということ。
それが悪いとか、だから本作がつまらないとか、そういうことではないのですけれども、身勝手な感想ではありますが、そこでちょっと「あれ?」と感じてしまったのは事実です。

とはいえ、これについては私の思い込みが悪いのであって、八目迷が責められるようなことではありません。
物語自体はわりとしっかりとコンパクトにまとめてきているので、かなり面白く読ませていただくことができました。
しかしながら、物語の前半で色々な設定を仕込んできているわりに、それがきちんと生かされないまま終わってしまっていると感じられる部分もあって、そういうところは、これがデビュー作であるが故の甘さなのかもしれませんけれども、いかにも惜しいところです。
1冊で終わらせる、ということを考えれば、これ以上膨らませたり、緻密に描写していったりはできない、というのもあるのでしょうけれど……。

ともあれ、これならば次回作も読んでみてもいいかな、と期待を抱かせてくれた、悪くない作品でした。
ちょっと気になっているんだよね、というような人は、読んでみても損はしない、かな。



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