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「ウェイプスウィード ヨルの惑星」

 2019-08-10
表紙のイラストはいかにもな美少女ラノベテイストになっているのですが、内容的にはかなりガチにファーストコンタクトものをやっていたのが、瀬尾つかさ の作品『ウェイプスウィード ヨルの惑星。
瀬尾つかさ の典型的なラノベ作品はあまり読んでいない、というか、そこまで評価していないのですけれども、ちょっと対象年齢が高めだったり、思いっきりSF読者に向けていたりするレ-ベルでの発表作品は割と好きなので、本作もちょっと期待して読み始めました。

海水面の上昇で文明を海にのみ込まれた地球に暮らす少女ヨルと、宇宙のコロニーから調査にやってきた木星出身の30代の研究者ケンガセンとの交流から、やがては物語の舞台となっている25世紀の地球における真実へと話は展開していきます。
なる程、そういう展開になるのか、という感じで、ちょっと面白く読ませていただきました。

本作の帯には、「人気エンタメ作家が贈る、『ソラリス』の系譜に連なる海洋SF!」という惹句が印刷されています。
『ソラリス』というのは、もちろん、早川書房も文庫で発売しているスタニスワフ・レムの『ソラリス』(あるいは『ソラリスの陽のもとに』)のことを指していますが、残念ながら私は『ソラリス』は未読なので、名作として名高い同作とこの『ウェイプスウィード』を比較してどうこうと語ることはできません。
なので、以下の記述は完全に私の勝手な想像からの話になるのですが……
この帯を読んで『ソラリス』的なものを期待して本作を読み始めた場合には、何だか思っていたものと違うなという失望を味わうことになってしまうかもしれません。

元々がエンタメ系のラノベをホームグラウンドにしている作者だからかどうかは分かりませんが、そこまでバリバリかつハードにSFをやろうとしている作品ではないから、そういう路線を求める人には合わないかなぁと思うのです。
この辺りの話をあまりやっていると、そもそもSFの定義とは何か、という、昔からある不毛で実りの無い論議に巻き込まれることになりかねないので、そこをあまり突っ込んでいくつもりはないですけれど。

早川書房は2000年代に入ってから積極的にラノベ・エンタメ系の書き手にSFを書かせているという印象があります。
それはSFというジャンルの読者を増やそう、ラノベ・エンタメを読んでいる層をSFに引っ張り込もうという意図があってのことでしょうから、イラストもこういう萌え系のものになりますし、設定の蘊蓄もあまり濃くはしない、ということになるのかもしれませんね。
それはそれで一つの考え方としてアリだと、私は思います。
瀬尾つかさ が、こういうちょっとライトな、だけれども内容的にはガチなSFを今後も早川書房などから出していくのであれば、それも読んでいきたいなと、そんな風に考えることになった1冊でした。



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