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「追憶の杜」

 2019-06-22
先月に『風牙』を紹介した時に早急に読むと宣言していた、続編の門田充宏の『追憶の杜』を読了。
前作の4編に対して、今回は3つの中編が収録されています。
公式の粗筋は、次のとおり。

人間の記憶をレコーディングし、他人にもわかるよう翻訳する技術を生みだした会社・九龍。創業者の不二が病に倒れてからも事業を拡大し続けていたが、記憶データをめぐって起きたいくつかの事件により、世間から非難と疑いの目が向けられていた。九龍に所属する記憶翻訳者の珊瑚は、恩師の不二と大切な居場所である九龍を守るため、事件の真相を探ろうとするが…。デビュー作『風牙』に連なる中編集。


主人公である珊瑚個人のことを描写するのがメインだったという印象のある『風牙』に対し、この『追憶の杜』では人の記憶のレコーディングと共通言語化という技術が生み出す問題にフォーカスしてきたという感じでしょうか。
まぁ、普通に考えても、こういった技術が実用化されれば、道義的・倫理的なことでトラブルが起きかねないなというのは想像がつくわけで、そこにどのような回答を出してくるのかがこういう題材の作品の読みどころの1つと言っていいでしょう。
で、『追憶の杜』がその点でどこまで踏み込んだものを書いてきたかですが、うーん、そこはまだ物足りないというか、もっと深く切り込んでもいいのではないかというように感じました。

なお、今回の3編のうち、2つ目に収録されている「銀糸の先」というエピソードで技術の悪用者の存在が描かれているのですが、その件は作中ではまだ解決してはいません。
もちろん、エピソード単体としてはきちんとストーリーはまとめられており、かつ、なかなか読み応えのある面白い話になっているのですが、根本的なところで大きな問題が残されている形です。
これは、今後もシリーズが続く場合には、この辺りが最終的なヤマ場になってくるのでしょうか。
それには、この『追憶の杜』が一定以上売れてくれないといけないでしょうけれど。わりと淡々としたところのある作品なので、そこはちょっとだけ心配かもしれません。

一応、表題作である3つ目のエピソード「追憶の杜」で九龍がこの技術を運用することで何を実現したいと思っていたのかということの一つが明らかになっているので、それを考えれば、この『追憶の杜』で物語として1つの区切りを迎えたとすることもできそうですしね。
とはいえ、折角これだけ面白いのですから、もう少し続けて欲しいんですよね、個人的な希望として。



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