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「ハロー・ワールド」

 2019-03-23
現代社会にある技術を題材に、近い将来に現実化しそうな問題を描くことを得意とする藤井太洋の『ハロー・ワールド』を読了。

特段の専門を持たずに「なんでも屋」を自任するIT系エンジニアが、本作の主人公。
そんな主人公が、友人達と広告ブロックアプリを開発したり、新型ドローンの営業で訪れたタイのバンコクで反政府デモに巻き込まれたり、行政からの干渉や盗聴を阻害する Twitter の改良版を作ったりするのですが……
ここで描かれているのは明日にも実際に起きてもおかしくないことであり、そこから生じる問題と、そこから生まれてくる未来像がなかなか刺激的で面白い作品です。
藤井太洋という作家は、これまでに読んできた作品の全てがそうでしたけれども、基本に技術や人類の未来に対する信頼や希望がありますよね。
その辺りは、例えば(作風はちょっと違いますけれど)小川一水等とも共通するところであり、私が藤井太洋を好きな理由の最たるものかもしれません。

本作も、そういう部分はしっかりと描かれています。
扱われている事件は世界的規模なものであったり、そこで主人公が置かれることになってしまう境遇は大変なものだったりします。
けれども、やはりどこかに世界に対する信頼のようなものが感じられるので、読んでいて辛さはありません。
その上で、物語が提示する状況は色々と深く考え込まさせらえるものだったりするわけであり、まさしく、「読書の楽しみ、ここにあり!」と評することのできる作品です。

私のように全くの文系人間であって技術的な点で深い知識は無いような者でも、ある程度の概略的な知識を持っていれば十分に、作中で何が起きてどのような解決がなされて行っているのかを理解するのは難しくないと思いますので、その点はご安心を。
とはいえやはり、最低限度のことくらいは知っていないと楽しめないかもしれないので、万人にお勧めとまではちょっと言い切れない、かな?
けれど、これは一読する価値のある、実にいい小説であることに間違いはありません。

第40回吉川英治新人文学賞を受賞したというのも、よく分かります。



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