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「磁極反転の日」

 2019-01-12
地球のことを1つの巨大な棒磁石に例えることって、しばしばありますよね。
北極にS極が、南極にN極があるという、アレです。
その磁極が逆になってしまう、という事態を描いた小説が、今回紹介する、伊予原新の『磁極反転の日』。

もともとは『磁極反転』というタイトルだった本作。
地球の地軸が移動するポールシフトと違い、磁極反転が起きたとしても自転軸については変わりがないわけだから、どちらかといえば災害としては軽微なものになるのではなかろうかと思ったら、それは間違い。
私はその辺りの専門家ではないので間違ったことを書いてしまうかもしれませんけれども、本書から得たこと、それに、以前から知っていたことを合わせて考えると……
磁極が反転するに至る経緯は、まずは現在ある地磁気が徐々に弱まっていくということから始まり、地球を包む地磁気がゼロになる段階を経て、次にようやく、それまでとは反転した形で磁極が復活してくることになります。
このようなプロセスを踏む磁極反転は、つまり、有害な宇宙線から地上を守っていた、その「盾」が一定期間失われるということを意味します。
その結果、地球に生きる動植物にいかなる影響が生じるのか分からず、また、私達の現在の生活の基盤ともなっている様々な電子機器が、降り注ぐ宇宙線によって破壊され、現代文明が崩壊する恐れも、大になるわけです。

そのようなとんでもない事態が現在の地球を襲うとなれば、どんなことになってしまうのか。
まぁ、本作の場合は舞台としているのが日本ですので、そこに限定するにしても、これはおそらく、とんでもない騒動になって、暴動とか、そういうことが全国あちこちで起きてしまう、というようなパニック小説になっているのかな、と思って読み始めたのです。

しかし、週刊誌の科学系フリーライターを主人公に、彼女が取材等をしていく過程で知ることになること等を書いた本作は、その手のものとは違っていました。
もちろん、磁極反転の可能性が政府によって発表された後には、様々な人達がそれぞれの立場から色々な動きを見せます。
その中には、到底理性的とは言えないようなこともあるわけですが、社会は基本的に冷静に事態への対処をしようとしていく、そういう様が、本作では描かれています。
そういう意味では、当初に予想していたディザスター物的な内容とは全然違っていた、とも言えるのですが、いかにもフィクション的な派手なカタストロフを選ばなかった結果として、本作には、地に足がついているというか、一定のリアリティーのある印象が生じたような気がします。

その結果、ちょっと地味なテイストの作品になったことは否めないですし、「そこをそのままにして物語を閉じてしまうのか」というような、エンターテインメントとして考えた時にはどうなんだろうという部分もあるのですが……
作者の、本作を書くにあたってのスタンスは、そういうところには無かったのでしょう。
そもそも、物語の軸足は、磁極反転そのものには無くて、それはあくまでもストーリーを紡ぐための装置の1つだとも、思えますし。

思っていたのとは違いましたが、なかなか、面白く読ませてもらいました。


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