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「戦の国」

 2018-12-29
冲方丁の『戦の国』は、戦国時代をテーマにしたオムニバス短編集『決戦』シリーズに彼が書き下ろした6つの短編を1冊の本としてまとめたもの。
収録作品は、それぞれのメインとなっている出来事がいつのものかで年代順に並んでいます。
それを順に紹介すると、次のようになります。

まず、織田信長を主役に桶狭間の戦いを描いた「覇舞謡」。
次に上杉謙信を主役に武田信玄との川中島の戦いを描く「五宝の矛」。
更に明智光秀を主人公に本能寺の変を描く「純白き鬼札」。
大谷刑部吉継を主人公に関ヶ原の戦いを描く「燃ゆる病葉」。
同じく関ヶ原の戦いを小早川秀秋を主人公に描く「深紅の米」。
最後が豊臣秀頼を主人公に大坂冬の陣・夏の陣を描く「黄金児」です。

それぞれ非常にメジャーな戦国武将であり、メジャーな事件・戦いであると言えます。
個々に丁寧に書いていけば、それだけで1冊ないしそれ以上の本にもなろうかという題材を、このように短編にするわけですから、(メジャーな人物と事件だからということで、かなりの部分で基本的な説明を割愛できるとしても)どうしてもダイジェスト的な読み味になってしまうのは否めないところです。
つまり、一般的に、それぞれに登場する脇役の人物像だけでなく主役の人物像も説明不足・描写不足となり、事件に至る諸々の背景の説明も通り一遍をざっと語るだけになってしまうということです。
それでも個々の短編を「読ませる」ようなものにしてみせるというのが作者の腕の見せ所であり、その点、本作はまぁまぁ上手くやれていると言っていいのではないでしょうか。
有名人物のある一面だけを切り取って語る形になっていて、人間というのは実際はそんなに単純ではないだろうにと思うところも無いわけではありませんけれども、短編にするのであれば、こうもなるだろうという感じです。

なお、初出の時点からそうしようと構想していたのかどうかは定かではありませんが、本作に収録されている6作品には、それぞれ統一的なテーマが存在します。
それがどのようなものなのかは、実際に読んでみていただいてのお楽しみとしておこうかと思いますが……
世の中が大きく変わろうとしている時代、それまでのものの考え方、価値観が大転換を迫られた時代、戦国の世が終わって天下泰平の時代が訪れようとしている、その最後のところを描くにあたっては、こういう視点もアリなんだろうなと、個人的には感じました。
作者が今後執筆を予定している大作の覚書を読まされている、という印象も抱かせられる作品集ではありましたが、最後の「黄金児」を筆頭に、わりと面白く読ませてくれる1冊でもあったかな、と思います。



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