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「名探偵誕生」

 2018-10-06
あちこちで結構評判が良かったので、当初は文庫落ちを待とうかと思っていた 似鳥鶏の『名探偵誕生』を購入しました。
公式のあらすじは……

「「神様。どうか彼女に幸福を」――王道かつ斬新。似鳥鶏が放つ直球の青春ミステリー!となり町の幽霊団地に謎の「シンカイ」を見に行く――小学4年だった僕は、学校の友だちとささやかな冒険に出た。その冒険に不穏が影が差したとき助けてくれたのが、名探偵の「お姉ちゃん」だった。彼女のとなりで成長していく日々のなかで、日本中を騒がせることになるあの事件が起きる――。ミステリとしての読み応えと、青春小説としての瑞々しさが高純度で美しく結晶した傑作。著者ならではの軽快な筆致で読みだしたら止まらない、老若男女すべての方におすすめしたい作品です。「名探偵の初恋と青春。だけど、誰もがちょっとなつかしい、『あの頃の僕』のお話しです」――似鳥 鶏」となっています。

年上のお姉さんへの憧れというのはジュヴナイル系の作品では鉄板の設定ですが、本作の場合は、そのお姉さんが名探偵となって様々な事件を解決していくという流れとなっています。
全5話からなる中、第一話では小学生四年生だった主人公が段々と年齢を重ねていくという仕掛けは、著者の以前の作品である『彼女の色に届くまで』と同じ構造だったので、そこに驚くことは無かったのですけれど(むしろ同じことをもう一回やるというのはどうなんだ、と思ってしまったくらい)、あちらを読まずに本作に触れた人は、結構新鮮な気分になったかもしれません。
タイトルの『名探偵誕生』が意味するところについては、ここまでの説明を読んで何となく察している人もいるでしょう。
まぁ、そういうことなわけですけれども、わざわざネタバレをすることもないでしょうから、ここでは敢えてこれ以上は触れないことにします。

年上への美人への恋心とか、思春期のもやもやとか、実らぬ気持ちの苦さとか、そういうものをもっと情感を込めて描くのもやり方としてはあるかもしれませんが、本作はその辺り、結構ドライな文体で書いています。
それは本作が、大人になった主人公が過去を振り返るという視点で語られているからなのですけれども、そのことが読者の感情移入を拒んでいるかというとそんなことはなくて、むしろある程度の年齢に達しているような人にとっては、一種ノスタルジックな読み心地を与えてくれるものになっていると感じました。
逆に、今まさに十代真っ盛りというような読者、あるいはまだそこを脱して間もない20代前半の読者というような層に、この造りがどこまで響くのかは不明です。
「お姉さんへの憧れ」という部分は、いわゆる「おっさん殺し」な要素となりますけれど、これは個人的な好みの問題でしょうが、私としてはこの『名探偵誕生』よりは、例えば森見登美彦の『ペンギン・ハイウェイ』辺りの方が好みかもしれません。
ともあれ、なかなか楽しく読ませていただいたのは事実であり、人にお薦めできる作品だと思います。



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