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「魔導の黎明」

 2018-08-25
「真理の織り手」シリーズ4冊目にして最終巻である、佐藤さくら の『魔導の黎明を、満を持して読み終えました。

まずは、裏表紙に掲載されている粗筋を引用してみましょう。

地方領民の蜂起、自治区との小競り合い、新たな反乱魔導士組織の噂…。内乱から10年経ったラバルタの政情は、不安定さを増していた。その頃、レオンの元をかつての弟弟子が訪ねてきた。そしてその日からレオンは姿を消してしまう。一方レオンの親友ガトーは、“鉄の砦”の魔導士から奇妙な相談を受けていた。全ての謎を解く鍵はレオンの師が研究していた禁術に。感動の最終巻。


つまり、ここまで描かれてきた、魔導を持たない者が魔導士を差別する社会、それに反発した一部の魔導士が起こした反乱、そんな中でかすかに見え隠れする希望、といったようなものが、この1冊でどのような結末を迎えるのですけれども、それが果たしてどのようなものとなるのか、ということですね。

創元推理文庫から刊行されてるハイファンタジーな本作は、いわゆるラノベのハイファンタジーとは傾向が違っています。
これはどちらがいいとか悪いとか、そういうことではありません。要はそれぞれの出版元、個々のレーベルの持つ傾向の話であり、ハードかつシリアスに行くか、それとも徹底してユーモアあるテイストにするのか、それを両極端としてそれぞれの要素をどの程度のバランスで導入するのかで、作品の傾向は千差万別になるわけです。
そんな中では、創元推理文庫におけるハイファンタジー作品というのはこの点において、よりハードに、よりシリアスに行く傾向があるという印象が私にはあって、本作もその流れにのったものの1つだと思っています。
とはいえ、多少のコメディー要素が無いわけではなく、そのおかげで、息苦しさに圧し潰されることなく読めるようにもなっているということも、指摘しておきましょう。

そんなシリーズの最終作である『魔導の黎明』ですが、そのタイトルにあるように、作品世界に対して未来への希望や明るさを示しうる、夜明けを感じさせるようなものになっていたのかどうか。
その判断は読者それぞれが行うべきものですが……
「えっこれで終わり?」と思う人も多分いるのだろうなというのは、容易に想像がつくものになっています。

しかし、ここまで描かれてきた内容からすれば、安易な終わり方をしてしまうのも、それはそれで違和感がありますから、個人的には、これはこれが正解なのではないかなと思っています。
ただ、一応、第1巻からここまでに登場した人物たちのオールスターキャストという体にはなっているものの、第2巻で登場した魅力的なキャラ、特にアニエス辺りの影がすっかり薄くなってしまったのが、少々残念だというのも正直な感想です。
折角のキャラを生かし切れていなかったなぁ、という。

その辺りは本作がデビュー作ということで、ここからの伸びしろ、次回作以降に期待すべきことかもしれませんね。
とはいえ、物語の軸をレオンとゼクスの2人に置いているのはシリーズとして考えても正解であり、これくらいのボリュームで作品をまとめる、幕を引く、ということを目指すのであれば、これは、ある程度は、やむを得ないことかもしれないのですけれど。
ともあれ、なかなかに面白いシリーズを読ませてもらいました。これは、まずは感謝しなければなりませんね。



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