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「最後にして最初のアイドル」

 2018-06-30
久し振りに、一読した段階で「この作者は頭がおかしい」と久しぶりに感じたのが、草野原々の『最後にして最初のアイドル』。
この場合の「おかしい」とは、ヤバイ方向、危険な方向、精神的な病の方向に「おかしい」のではなく、発想がぶっ飛んでいる、悪ノリ100%である、しかもそれをガチガチのSFに落とし込んでくる、というような、やり過ぎ感満載の、やり過ぎてもはや何が何だか分からなくなってしまうというような類の「おかしい」です。

この作品のことを簡単に説明しようというのは、なかなかに難しいというか、率直に言って不可能ではなかろうかと思ったのですが……
さすがにそれだけだとアレなので、裏表紙の作品紹介だけでも引用しておきます。

「“バイバイ、地球――ここでアイドル活動できて楽しかったよ。” SFコンテスト史上初の特別賞&「神狩り」以来42年ぶりにデビュー作で星雲賞を受賞し、SF史に伝説を刻んだ実存主義的ワイドスクリーン百合バロックプロレタリアートアイドルハードSFの表題作をはじめ、ガチャが得意なフレンズたちが宇宙創世の真理へ驀進する「エヴォリューションがーるず」、異能の声優たちが銀河を大暴れする書き下ろし声優スペースオペラ「暗黒声優」の3篇を収録する、驚天動地の草野原々1st作品集!!」


ネットでも散々話題になったのでご存知の方も多いでしょうが、表題作で、2016年に第4回ハヤカワSFコンテストの特別賞を受賞した「最後にして最初のアイドル」(なおこの作品は、その後、SFファンの投票によって選ばれる2017年第48回星雲賞の短編賞も受賞しています)は、もともとはゲーム・TVアニメの『ラブライブ!』の2次創作として同人誌で発表された「最後にして最初の矢澤」が下敷きになっているそうです。
ですので、『ラブライブ!』を知っていると、ということはこれが 矢澤にこ で、こちらは 西木野真姫 か、と納得できるというメリット(?)があります。
ですが、それは内容には全く無関係のことであり、単に、なる程ね、と思うという以上の意味はありません。
なので、同作品を知っているか、知っていないか、好きか、嫌いかということは本作を読むか読まないか、楽しめるか楽しめないか、ということには、基本的には関わってこないと言いでしょう。

ネットで本作の感想をざっと調べてみると、まあこれが面白いくらいに賛否両論分かれています。
アイドルとして有名になりたいと女子高生が願うことから始まった物語だったはずが、ジェットコースターの様に加速してどんどん転がっていくストーリーに振り落とされまいと読み進めていくうちに、いつの間にか話の規模は拡大の一途を辿り、宇宙の秘密にまで迫っていく。
その、一歩間違えれば誇大妄想的な展開を良しとするのか否か、概ね、表題作に対する感想はそこを起点として分かれているように思えます。
「神とは何か」とか、「宇宙誕生の秘密とは」とか、「人間の意識とは」というような、大きな枠組みに迫るというのは、古典的でオーソドックスなSFらしいSFだと言えるでしょう。
それをこういった題材で、まるで悪ふざけのようなテイストで、強引な文章で畳みかけてくるところとか、それなのに端々にハードSF的な考証やガジェットを入れ込んでくるところといった辺りが、評価の割れる一因かもしれませんね。
実のところ、私が一番楽しめたのは、そういう、いわゆる「バカSF」に分類されるような悪ノリの部分だったのですけれど。
科学的なところに細かい検証を加えていくとどうなのかは分からないのですが、これでもかと様々な要素を矢継ぎ早に投入してきて、これはこういうものなのだ、と押し切る力は一級品ではないでしょうか。

B級、バカSF、悪ふざけ、そういうものを好む人には、是非。
真面目なSFファンは、激怒するか、呆れかえるか、どちらかかもしれないけれど。

なお、結構グロテスクな描写があちこちにあるので、そういうのが苦手な人は、ご用心。



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