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「滑らかな虹」

 2018-04-28
以前にかなり面白いとしてここでも紹介した『ゴースト≠ノイズ(リダクション』に続く長編2作品目が、十市社 の『滑らかな虹』。

被害者が転校してしまうというかなり厳しい結果となった「いじめ」事件があった小学校で、その「いじめ」の中心となっていた生徒がいるクラスを担任することになった男性教師が、再びいじめが起きてしまうことを防ぐという目的で、クラスの全員に提案した「ニンテイ」ゲーム。
上巻を読んだ段階で、クラスで繰り広げられていた「ニンテイ」ゲームが、そのまま平穏に進行して行くわけがないと、どこかで破綻して、それをやらなかったよりも、もっと酷いことになっていくのだろうなという予想はできていましたし、その覚悟もできていました。
それでも、こういう方向で酷くなるというのは、ちょっと想定していませんでした。

「ニンテイ」ゲームがどのような展開を迎えてどのように破綻して行くのかは、ネタバレを防いで、これから本作を読むであろう人の楽しみを奪わない為に伏せておきます。
が、つまるところ、この方向性こそが、作者がこの作品でやりたかったことなのだろうなと推測できます。
導入のところで「いじめ」が多少フォーカスされていたので、それがメインになるのかと当初は思っていたのですが、いずれにしても、あまり心地の良い題材では無いということは、一応、触れておきましょう。
気分爽快になる物語、スカッとする勧善懲悪なテイスト、明るく希望に満ちたラスト、純な登場人物達、といった要素こそを、こういう学校を主な舞台にした作品に求める人には合わない作品ですが、面白いことは保証します。

とはいえ、粗の無い完璧というわけでは無くて、しかも致命的にも成り得る欠点がこの作品にはあります。
それが、物語の根幹をなす「ニンテイ」ゲーム。
これがあるからこそ『滑らかな虹』というストーリーが成立し得ているのですけれども、そもそもそこに無理がありすぎます。
何で5年3組担任である柿崎辰巳は「いじめ」対策としてそれを考えたのか。
新たなる「いじめ」の発生を抑制するのに「ニンテイ」ゲームがどのように有効なのか。
学校や保護者側もその実施を認めているという描写は一応冒頭にあったもののそこに説得力は薄かったですし、全体的に、「ニンテイ」ゲームの実施関係にはリアリティーが薄すぎるというか、全くもって足りていないのです。

結局、それが最後まで尾を引いていて、物語の完成度をかなり落としてしまっている様に感じました。
それ以外の部分では、叙述的なトリック、一人称視点であることが重要な意味を持つ語り口の仕掛けがなかなか効果的で面白く読みました。
(ベタだの何だのとは言えども私もやはり大好きな)大団円とは言えないし、やるせなさ、割り切れなさが大いに残るとはいえ、まずまず良い読後感を持たせる終わり方も好きなタイプと言える作品だっただけに、ここさえ何とかしていればと、凄く残念です。

『ゴースト≠ノイズ(リダクション)』とどちらが良いか、と問われれば、前作の方かなぁ。
前作越えの期待は満たされない結果となりましたが、作者はこれがまだ商業出版2作目。
本作と前作の出来を考えると、これからの作家活動に大いに期待できるということは、間違いないでしょう。

次回作も、楽しみにしています。


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