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「機巧のイヴ」

 2018-04-21
昨年秋に本屋の文庫新刊コーナーで見かけた時にちょっと興味を惹かれて購入しておいた、乾緑郎の『機巧のイヴ』。
江戸時代後期辺りをモデルにしているのかなと思われる架空の世界を舞台にして、時代小説にSFを融合して、機械人形、オートメイルに心が宿るのか、というようなことを描いた作品になります。

裏表紙の粗筋を引用すると、「天府城に拠り国を支配する幕府、女人にだけ帝位継承が許された天帝家。二つの巨大な勢力の狭間で揺れる都市・天府の片隅には、人知を超えた技術(オーバーテクノロジー)の結晶、美しき女の姿をした<伊武>が存在していた!天帝家を揺るがす秘密と、伊武誕生の謎。二つの歯車が回り始め、物語は未曽有の結末へと走り出す――。」となっています。
実際に「未曽有」の物語だったかどうかは、まぁ、こういうものは基本的に大袈裟なくらいの表現を使うものですから、それはそれだったりするのですけれども、ともあれ、ざっくりとした物語のアウトラインは、こういう内容です。

巻末の解説で大森望も書いていますが、こういう話ならばいわゆるスチームパンクな世界観にしてきそうなところを、本作はあくまで、江戸時代の風俗や技術に即した描き方をしているところがポイントです。
そしてその中にあって、人と比べて違和感のない動作や表情、そして会話を繰り広げることができる伊武の異質さが際立ってくるのですけれども……
残念ながら本作中において、何故そのような時代にそぐわない技術がそこにあったのかについての言及はありません。

まぁ、こういう場合の常套として、何者かがその技術を与えた、宇宙からの来訪者か未来からの使者かといったところがあるわけですが、そういうお約束を踏襲しているネタが隠れているのか、あるいはそれ以外のことが構想されているのか、正解は現時点で明らかにされていないのです。
その辺は、いずれ刊行されるであろう続編待ち、でしょうか。

なお、伊武が作られるにあたってのひな形であった(と、いうことにしておきます)「神代の神器」を地下に収めているという、天帝の御座所内にある天帝陵の外観についての描写が、まるで大友克洋の『AKIRA』に出てきた、アキラを絶対零度で凍結封印したシェルターそのままなビジュアルイメージでした。
それはもう、ついつい、アーミーの大佐が発したセリフ、「見てみろ、この慌てぶりを。怖いのだ。怖くてたまらずに覆い隠したのだ。恥も尊厳も忘れ、築き上げてきた文明も科学もかなぐり捨てて。自ら開けた恐怖の穴を慌ててふさいだのだ。」をつぶやいてしまいたくなるくらいに。
おそらく、ですけれども、この辺は乾緑郎から大友克洋へのオマージュなんだろうなぁ。
「神代の神器」がアキラのような取扱い厳重注意なものなのかどうかは、分かりませんけれど。



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