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「ゲームの王国」

 2018-03-17
私が定期的にチェックしている書評サイトや好きな作家からの評判も良かったので、これは是非購入して一気読みしなければ、と、寝不足上等の覚悟でページを捲ったのが、小川哲の 『ゲームの王国』 上下巻です。

クメール・ルージュが支配するポル・ポト政権時代で恐怖政治の下に生きる人々を描いた上巻については、本日付で更新した、本館の「雑記」に簡単な感想を書いています。
今回、この「別館」で紹介するのは、その上巻の続きであり、一気に時系列が進んで、現代カンボジアでの<ゲーム>を描く下巻です。
ちょっと公式の粗筋を紹介してみると……「「君を殺す」―復讐の近いと訣別から半世紀が経った。ソリヤは理想とする<ゲームの王国>を実現すべく、権力の頂点を目指す。一方でムイタックは自身の渇望を完遂するため、脳波測定を利用したゲームの開発を早熟な少年アルンと共に進めていた―。」というようになっているます。
全編を読んで分かるのは、本作は最初から最後まで、通奏低音のように、「ルール」という言葉が流れているということでした。

なお、当然のことですけれども、単に「ルール」と言ってもその内容的には色々とあいrますよね。
ここでの「ルール」は、例えばスポーツの「ルール」だったり、麻雀やポーカー等の遊戯の「ルール」といったものだけではなく、社会生活の「ルール」や国家の「ルール」といったものも含みます。
主要な登場人物の1人であるソリヤの言葉を借りるのならば、「法律が機能していて、理不尽なこともない。みんなスタート地点は同じで、才能と努力によって誰でも勝利することができる」、「公正なルールが設定され、人々がそれを守る社会」です。

その内容はともかくとして、高い理想を掲げてそれを実践しようとし、そして失敗したポル・ポト政権の生み出した、あまりに多くの死。
そしてその陰惨さが育んだ、2人の男女の理想と思念の行きつく先がどうなるのか。
それは、これから本作を読む人の楽しみとして、ここでは触れませんけれど、なる程、こう来たか、という感じで、かなり面白く読ませてもらった、ということは書いておきましょう。
もうちょっと書きこみが欲しい、ここはもっとエピソードが欲しい、というような部分が無かったわけではありませんが、デビュー2作目でこれというのは、なかなか将来が楽しみな作家だと言うことが出来そうです。
最高に楽しめました。

なお、上巻では、あまりSFとは感じられなかった本作ですが、この下巻でそれがどうなっているか。
読者それぞれの持つSFの概念、定義の如何によって感想は異なるのでしょうけれど、「SFの定義とは何か」というのは、これまで一度も答えの出ていない、むしろお互いの意見が衝突して喧嘩になること必至の話です。
広義にとらえるか狭義に捉えるかという観点もありますが、個人的には、そこにあまりこだわるのは、本作を楽しむ上で意味が無いかな、と考えています。
それに、下巻に出てきたガジェットを考えれば、SFと言って差し支えは無いかな、とも思いますしね。

これだけ面白いものを読ませてもらった以上は、デビュー作の『ユートロニカのこちら側』(同社 同文庫)も読まなければならないかな。





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