「図書迷宮」

 2018-01-27
巻末のあとがきにて作者曰く、「銀髪不死ロリババア結婚してくれ」「遺跡書庫に住みてェ永遠に読書してェ」「詠唱叫び交わす魔法戦闘、控えめに言って大好き」「二人称でメタ小説書きたいんじゃ」「アルテリアの肋骨ぺろぺろ」「過去の絶望を書き換える/乗り越える物語を書きたい!」という欲求を全て注ぎ込んだという、十字静の『図書迷宮』。
昨年10月の発売直後からすぐに、かなり話題になっていたことは知っていたのですけれども、ぱっと見、私の好きそうなネタの作品だなと思いつつ、実際に読むのに9ヶ月を要したのは、まぁ、いつもの私の天邪鬼的な性格の所為です。

作者はこれがデビュー作であり、どうやら本作は改稿に3年を要したらしく、実際、かなり拘って書かれたということが随所から感じられる力作になっていると思います。
500ページという厚さを誇りながら、読み始めると案外とサクッと読み切れてしまうのは、おそらく、ベタ過ぎるくらいにベタなキャラ設定とか、(意図的にそうしたのだろうとは思いますが)えらく軽い語り口とか、そういう辺りが原因でしょう。

幾つかのレビューで、本作の一番の問題点は冗長であること、長すぎることであり、無駄を削る作業を行えばもっとコンパクトにできたはずだ、という意見を目にします。
確かに、そういう側面があるのは否めないと私も思います。
とはいえ個人的には、この冗長さも含めて本作の「味」だなと感じているので、まぁ、ここは個人の嗜好の問題になるでしょうか。

私が本作に感じる問題点というのは実はそれとは違う場所で、つまるところ、物語の開始から終了までに作中で流れた時間が短すぎる、ということ。
つまり、展開されているストーリーの流れを考えれば、これだけの出来事が、たったそれだけの時間で起きるというのに、さすがに無理を感じてしまったのです。
一応、作中に登場しているガジェットの機能等で、ある程度は理屈が付くのですけれど、それにしても、さすがにこれは無い、かなぁ。
スピード感重視ということなのかもしれないとは思うものの、それはちょっと無いのではないか、という違和感は拭い去れませんでした。

と、まぁ、そういう大きな欠点はありつつも、控えめに言って、本作がかなりの意欲作であることは確かなことです。
冒頭に書いたように、それは作者が自分のやりたいことを追求した結果であるわけですが、デビュー作でこれをやってきたという、その一点だけでも高評価に値するのではないかという気がします。
ラノベ業界の通常の流れを考えれば、2作目、3作目にこれと同じような時間、労力をかけられる可能性は低いでしょうし、その意欲は素晴らしい。
粗のあるところは、デビュー作だから仕方ない、というようにも考えられます。
なので、文句は書きましたが、なかなか刺激的で面白い作品として、なかなかの高評価を付している、ということは、最後にお断りしておきます。
興味のある人は、読んでみて損はしないのではないでしょうか。

これは、この次のデビュー第2作目にどのような作品を発表してくるのか、ちょっと注目しておくべき作家かもしれません。
ただし、本作をシリーズ化することには、個人的には賛同できません。
こういうネタは単発で終わらせてこそであり、シリーズ化はむしろ作品の質を落とすことになるだけだと思います。


タグ :
コメント












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
トラックバックURL:

http://pantarheibekkan.blog110.fc2.com/tb.php/1868-359bbca9

≪ トップページへこのページの先頭へ  ≫