「深海大戦 Abyssal Wars 超深海編」

 2018-01-20
私の好物の1つとも言える海洋SFジャンルの、全3巻からなる藤崎慎吾の大作小説が、『深海大戦 Abyssal Wars』になります。

深海を舞台にして、海に生きる場所を求めたシー・ノマッドと、陸上にある旧来の国家群(特に先進諸国)との対立を描いていく作品になるのかな、と思わせておいて、実は異性文明との接触ネタを軸に据えた作品だとは、読み始めた当初は想定すらしていませんでした。
作者の過去作である 早川文庫JAの『ハイドゥナン』や文春文庫の『鯨の王』といった、同じく海洋を舞台にしたSF作品の印象に知らずに縛られていたのかもしれません。
藤崎慎吾の海洋SFで、かつ深海が題材となれば、当然こういうモノになるよね、という先入観というか……
そういう、ある種の予定調和のようなものを外してきたのは、少々新鮮だなと感じました。

本作の場合、著者の過去作品から推測できる、という意味での予定調和が、別の意味での予定調和、つまり、人に与えられたオーバーテクノロジーの謎とか、未知の世界の探求とか、そういうものを題材にした一般にもウケそうなエンターテインメントなSFをやる場合の非常にベタな方法に置き換わっているだけだ、と言うこともできてしまうなと、思わないでもありません。
それが悪い、というわけでは、必ずしもありませんけれど。

作品の1つのキーポイントであるシー・ノマッドという設定には、ハヤカワ文庫JAから出ている上田早夕里の『華竜の宮』や、その続編となる『深紅の碑文』といった作品のことをどうしても連想させられてしまったのは事実ですが……
本作はあれらとは違いディストピアものというわけではありませんので、その雰囲気は随分と違っています。

帯には様々な人からの賛辞が印刷されていますが、実際読んでみて、なかなか面白い作品でしたし、興味を惹かれたという人は、是非、ご一読ください。


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