「WORLD END ECONOMiCA Ⅲ」

 2017-11-25
元々は同人ヴィジュアルノベルとして発表された物を、商業ベースの文庫としてリライトしたという作品の完結編が、支倉凍砂の『WORLD END ECONOMiCA Ⅲ』。

全3巻の全てがかなりの厚さを誇る本シリーズですが、この最終巻のページ数は約800ページ。
本の面白さとその厚さとが正比例するのであれば、面白い作品を読みたいと思っている人は、本屋に行って、とにかく分厚い小説でも買えばいい、ということになるわけですけれど、実際のところそんなことは無い、というのは皆さんご存知の通り。
それでも、厚さと読み応えとの間に一定の相関関係があることは否定できないところですよね。

もちろん、読み応えばかりあって内容がそんなに面白くも無いという、苦行めいた本も世の中には色々とあるのが困りもの。
とはいえ、ある人にとってつまらない本が、他の人にとっても同じとは限りません。
その辺は、書店でその本を見かけて買おうかどうかを決めた自分の判断を信じて読み始めるしかないものの、ああ、しくじったな、と感じてしまうことも無いではありません。
それでも、勝率はまずまずのものだと思っている私が、これはちょっと良さそうだぞと思って手に取ったシリーズの最後を飾るこの第3巻は、かなりの盛り上がりを見せてくれて、予想通り、大いに楽しめる作品となっていました。

今回題材に選ばれたのは、サブプライムローンの破綻から始まった2008年のリーマン・ショック。
といっても実際にあったことをそのまま小説として取り込んだノンフィクション形式なわけでは無くて、そこに色々と脚色は加えられています。

当然ですけれども、ここで描かれていることをそのまま鵜呑みにして、株式運用やデリバティブ取引等といった投資の世界はこういうものなのだなと信じ込んでしまうのは愚か者のすることなわけです。
それはこれがあくまでエンターテインメントなライトノベルだからであり、つまりは、どんなに主人公が苦境に陥ろうとも最後は全て上手く行って「めでたし、めでたし」となるのは既定路線だと言えます。
それが悪いということではありません。だからこそ安心して読んでいられる、各キャラクターの会話だったり駆け引きだったり関係性だったりを、じっくり、ゆっくりと堪能していられる、という側面もあるわけですしね。

第1巻から仕込んでいた伏線も上手く料理して回収していますし、経済系娯楽キャラクター小説として、なかなかの名作と言えるのではないでしょうか。
全3巻、そのボリュームで腰が引ける人もいるかもしれませんけれども、読んで損をするということは無いと思います。面白かったです。


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