「ビビビ・ビ・バップ」

 2017-10-28
奥泉光の 『ビビビ・ビ・バップ』 は、「本館」の「読む」でも紹介している 『鳥類学者のファンタジア』 主人公である池永霧子(本名は 希梨子)の曾孫であり、同じくフォギーという芸名を名乗ってジャズピアニストとして活動している木戸桐が主人公の、660ページというボリュームを誇るSF作品。
なるべく軽い紙を使おうとしたのでしょう、そのページ数に比して手に持った感じはまるで重くないのですけれども、見た目のインパクトはかなりのもの。
「これ、人を殺せるんじゃないの」というくらい、鈍器として色々とつかえてしまいそうな見た目の1冊です。

とはいえ、装丁のデザイン、表紙のイラストはキャッチーでポップな、なかなかにハイセンス。
私はジャズにはそこまで詳しくないので気が付かなかったのですが、どうやら、作中でも重要な位置を占めるロサンゼルス生まれのバスクラリネット、アルト・サックス、フルート奏者、エリック・ドルフィーの、亡くなる直前に行われたライブの様子を収めたライブアルバム、『Last Date』のジャケット写真のパロディーになっているようです。

これがどういう作品なのかを簡単に説明しようとすると難しいのですが、とりあえず、帯にある惹句を引用すると……
「人類を救うのはアンドロイドの子猫!?女性ジャズピアニストが世界的ロボット研究者から受けた奇妙な依頼。それが人類の運命をゆるがす事件の始まりだった。AI技術による人間観の変容を通奏低音に、稀代の語り手が軽やかに壮大に奏でる近未来エンタテインメント小説!」
「電脳空間(サイバースペース)の架空墓(ヴァーチャルトゥーム)、デジタル人格としての永遠の生命、密室殺害事件、天才工学美少女、機械分身(メカニカルアヴァター)、電脳ウイルス大感染(コンピューターウイルスパンデミック)……21世紀末の超知能社会を奥泉光が描く!」
と、なります。

つまるところ、アンドロイドやAI、人の記憶パターンや人格をコピーして電脳世界に再現するデジタルツインズ等の題材を使って、ネットを介して繋がる電脳スペースに社会のかなりの部分を依存してしまっている人類を襲う大災害を描いている作品、と言えば分かりやすいでしょうか。
かなりスケールの大きな話で、かつ、この物理的な厚さですから、仮にこれを読むのは大変そうだなと、店で実物を目にしたならば思うかもしれませんけれど、そういう心配は、あまりしなくていいでしょう。
本作、実は、かなり読みやすいのです。
その読みやすさの一番の原因は、本作における奥泉光の文体。とにかく饒舌で、軽快なテイストが持ち味で、それは彼の他作品でも感じていたことではあるのですが、今回は特にそれがハマっていると感じました。
また、扱っているテーマの深刻さに対して物語は基本的にドタバタコメディー的な色味が強くて、それもあるから、必要以上にシリアスになることなく気楽に読めるようになっている、とも言えるでしょう。

主人公の関連性も含め、本作は、おそらく『鳥類学者のファンタジア』の続編という扱いにしても差し支えないのでないか、と思います。
いい作品でした。



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