「黄昏のブッシャリオン」

 2017-10-21
光背を背負った仏像の形をしている巨大なロボットが格闘技的な構えをしている表紙からして、どこからどう見てもネタ小説のような見かけをしているのが、碌星らせん の『黄昏のブッシャリオン』。

本作の始まるのは未来の関東、おそらくは現在の東京西部、、立川辺りです。
石油等の化石燃料、あるいは原子力、太陽光や風力等の自然エネルギー、そういった物理的なものに頼るのではなく、人の精神の力、その中でも人の「善行」を源とし、衆生が功徳を重ねることでその獲得エネルギーが増加していく「徳エネルギー」が発見された。
さらに、高められた徳の力がマニ車を回すことで永久的にエネルギーを得ることができる機関、徳エネルギーを通常の動力に変換するマニタービン(あるいは徳ジェネレーター)が発明されたことで、そんな無尽蔵の永久機関の開発によるエネルギー革命で平和に包まれた黄金期を迎えながらも、その理想社会を「徳カリプス」と呼ばれる大災害が襲い、人類社会が崩壊してしまう事態になった、というのが本作の基本設定です。

「徳カリプス」、それを少し具体的に説明するならば……
余りに大量の徳がポテンシャルとして蓄積されたことが原因なのか、予想されざる徳雪崩が起きて人々に強制成仏、連鎖的集団解脱現象が発生してしまっというものになります。
そのような黄昏の時代では、本来は人類へ奉仕し、その最大幸福を求めるべく作られた機械知性達が、人の幸福は功徳を高めて解脱することにあるという判断のもとに人々を強制解脱させようと襲ってくるようになっています。
この、荒廃した世界を舞台に、物語が始まります。

以上のような、悪ノリと冗談で作られたとしか思えないような設定の上で描かれるストーリーは、しかし、実はかなりハードでシリアスなディストピアSFだったりするところが、本作のいいところではないでしょうか。
「サイバーパンク」、「スチームパンク」というのは、それぞれSFのジャンルの1つですが、作者は本作について、「徳パンク」を自称しています。
採掘屋たるガンジーとクウカイの2人が、徳エネルギーを求める採掘活動の中で、肉体を舎利バネスティックによって強化した女性、舎利ボーグのノイラ等と出会う、何気に深いテーマを内包した物語は、この1冊ではまだまだ序盤もいいところまでで終わり。
ここから彼ら、彼女らがどうなっていくのか、大いにわくわくさせられてしまいました。と、いったところで、引き続き続巻が出ることを期待しつつ、今回の紹介文はこれまでとしておきましょう。
基本設定の特異さばかり説明している気がしないでもないものの、そこに興味を抱いて本作に手を出してみようと考える人が増えるのであれば、それはそれでいいかな、と。
実際に読んでもらえれば、本作のガチさは伝わると思いますし。



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