「横浜駅SF 全国版」

 2017-10-07
今年の5月末に「本館」の「読む」に掲載した作品の続編である、柞刈湯葉の『横浜駅SF 全国版』を読了。

続編、という扱いで紹介しましたが、実際的には外伝集というか、サブエピソード集といった方がいいかもしれないような内容になっています。
ここに収録されているのは、「瀬戸内・京都編」「群馬編」「熊本編」「岩手編」の4編で、その全編を貫く軸になるものが「プロローグ」で語られていますので、言い方としては、連作短編、と呼ぶのが正しい、かな。
第1作に出てきたキャラクターも登場して、そこでは触れられなかった謎の部分への言及もありますから、そういう意味では「続編」というのも間違いではありません。
更に、この「全国版」を読んだことで新たに生じる疑問などもあったりするので、これは、作者には是非、『横浜駅SF』を、最低でも、もう1冊は書いてほしいものです。

世界観のイメージは、相変わらず秀逸ですし、田中達之のイラストも作品の雰囲気にはピタリとハマっています。
どこかアイロニカルな文体は、本作には合っているということもあって、今回も非常に楽しく読ませていただきました。

無限に自己増殖を続ける横浜駅が本州のほぼ全てを覆い尽くして「横浜駅化」しており、北海道、四国、九州が横浜駅の侵入を防ぐべく抗戦を続けている、という本作の世界観。
これは、横浜駅が開業以来常にどこかしら工事が行われていることから、永遠に完成しない駅として「日本のサグラダファミリア」とも呼ばれている(工事が始まったのはサグラダファミリアよりも横浜駅の方が先だから、あちらを「スペインの横浜駅」と呼ぶべきだという主張もあり)事実を知っていると、余計に、ネタ小説としか思えなかったりもするくらいです。
しかし、小ネタの仕込まれたディティールが、冗談で終わらずに設定からしっかりと作り込まれていることが分かってくるにつれて、おお、これは意外としっかりと「SF」をやっているではないか、と唸らされるようになってくるのが、本作のいいところ。

どうせ一発ネタのウケ狙いなんだろうと決めつけたりせずに、是非一度、手にとってお読みいただくことを、お勧めします。


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