「彼女の色に届くまで」

 2017-07-15
似鳥鶏の 『彼女の色に届くまで』 は、画家を目指す画廊の息子である高校生の主人公の緑川礼と、ふとしたきっかけで彼と知り合った、無口で謎めいたところのある、そして絵が物凄く上手い同学年の少女、千坂桜とが、絵画に関連して起こる様々な事件を解いていくというミステリー。

こういう作品の常として、個々のエピソードそれぞれで特定の絵画が取り上げられていきます。
そんな中で、本作がちょっと他と違うところは、その絵画そのものに関して何らかの事件が起きる、あるいはその絵画に絡む謎が解き明かされる、というのではなく、作中に登場する架空の画家の架空の作品について起きる事件について、探偵役である千坂が世界的な名画をヒントにして、事件の謎を解く、というところでしょう。

そう言われても、それがどういうことなのか分からない、という人もいらっしゃるかと思いますが……
これは、実際に本作を読んでいただく以外の方法で、ネタバレを防ぎつつ説明するというのが、なかなか難しいなぁ。
初読時に感じる、「ああ、なる程、そういうことか」という驚きを削いでしまってもいいのであれば、書きようもあるのですが、その辺り、私の力不足で、すいません。

なお、作中で登場した名作絵画については、サイズは小さいものの、巻末にカラー印刷で図版が載っているというのは、新設設計でいいですね。
ちなみに、その中に1枚だけ作者名がないのがあるので、これはどういうことだろうと思って調べてみたら、これは実際、作者が不詳ということらしいです。

また、もう1つの本作の特徴として挙げられるのは、作中での経過時間の長さでしょう。
高校生活から始まるミステリーといのは、とかく、短い高校生活3年間の間に、主人公の周辺で立て続けに事件が起きるという不自然さが付き物だったりするわけです。
そこが、本作の場合は全部で5つあるエピソードについて、1つが終わって次に進むたびに、しっかりと時間が経過しているので、主人公達が高校時代、大学、そして社会人になるまでを描く作品となっているのです。

ボーイ・ミーツ・ガールな恋愛モノとしてはどうかというと、それだけの時間が作中で流れるわけですから、その辺も、なかなかもどかしい関係ながらも、しっかりと描かれています。
この手の作品は人気が出た場合にシリーズ化する、というのも考えられて書かれたりすることもあると思いますけれど、本作の場合、最終第5話で色々なことにかなりきっちりと区切りがつけられており、ここから更に続きを書く、というのが、ちょっと想像しにくい感じになっています。
主に「ラブ」な部分で不満が残る、という人もいるでしょうけど、これは読者それぞれが好きに想像していけばいいんじゃないかな、というのが、私の感想。
最後に明かされる真実も、そう来たか、という感じで楽しませてもらいましたし、これは、結構なお勧め作品です。



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