「ビッグデータ・コネクト」

 2017-05-13
これまでに読んできた3作品の完成度と読了後の満足感から、かなりの期待を持って読み始めた、藤井太洋の 『ビッグデータ・コネクト』。
タイトルで何となく分かるでしょうが、マーケティングの分野で何かと取りざたされる「ビッグデータ」が今回の題材。
裏表紙の内容紹介を引用させていただくと、「京都府警サイバー犯罪対策課の万田は、ITエンジニア誘拐事件の捜査を命じられた。協力者として現れたのは冤罪で汚名を着せられたハッカー、武岱。二人の操作は進歩的試聴の主導するプロジェクトの闇へと……。行政サービスの民間委託計劃の陰に何が?ITを知り尽くした著者が描くビッグデータの危機。新時代の警察小説。」 となっています。
ここにもはっきりと書かれているように、これはあくまで警察小説と言うべき作品で、SF感は今までで一番薄い……というより、ほとんどありません。

ビッグデータの利用というのは、プライバシーの侵害と密接にかかわってくる問題ですよね。
ネットでの買い物や実店舗でのクレジットカードの購入履歴、カード番号に暗証番号、Suica 等の利用状況から導き出される生活圏や移動範囲の情報、住基カードやマイナンバーから分かる住所や本籍地、その他諸々のビッグデータがあれば、その人のことがデータ的に丸裸にできるわけです。

だからこそ、その管理と収集・利用には慎重の上にも慎重を重ねなければならないのですが……
実際の世の中がどうなっているかというと、故意のものもそうでないものも含め、データ流出のニュースが絶えることなく発生しているというのが現実。
そんなわけで、官主導・民主導を問わず、ビッグデータの収集には懐疑的であり、できればその対象に含められるのは御免こうむりたいと思っているのが、私という人間です。

だからこそ余計に、「ビッグデータ」が「コネクト」される状況を題材にした本作は、非常に興味深く、関心をもって読ませてもらったのですが、いや、これは面白い。

そして、本作を読んでいて強烈に印象に残るのが、システム開発事業にみられる、中抜きに次ぐ中抜きと、何次請けかカウントするのも馬鹿らしくなるくらいの下請けばかりが薄利な上に持ち出しばかりで苦労する、あまりといえばあまりにブラックな労働環境への糾弾。
作者は過去に実際にITエンジニアとして働いていたことがあるらしいのですが、だから、この一連の描写にこれだけのリアリティーがある、わけか。
あくまでフィクションであって、実際にはこんなことは無いんですよ、と言うことができればいいのですが、実際は、同様のことが今も現実にそこかしこで行われているというのが本当のところなんでしょうね、おそらく。

これは、自分の子供には間違ってもITエンジニアだけにはなるなよ、と言いたくなるレベルの話です。
幸いにも(?)、私は子供どころか結婚すらしていないので、その心配はしなくて済むわけですけれど。



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