「狼の口 ヴォルフスムント」第8巻

 2016-11-26
スイス独立闘争を描く久慈光久の『狼の口 ヴォルフスムント』が、今月中旬に発売になった第8巻で、堂々の最終巻を迎えました。
そこで、今回の、「本館」更新に先がけた読了本紹介には、それを記念して同コミックスを選んでみました。

今回は1冊を丸々かけて、物語のクライマックスであるモルガルテンの戦いが描かれています。
もう、最後を飾るにふさわしい迫力、情け容赦のない殺戮の連続で、残虐シーンのある作品だからということで、いつ R18指定がついてもおかしくないくらいなのですけれど、しかしその情け容赦のない描写こそが、第1巻から続く本作の最大の魅力の1つ。
痛めつけられた上に痛めつけられるからこそ、山岳森林三邦盟約者団の反抗に読者はこうも興奮させられるのです。

帯の惹句を信じるのであれば連載開始時から久慈光久が描きたかったことこそが、この「モルガルテン」だとのこと。
これまでの全ては、この236ページの為にあった、と、そういうことなわけですけれども、なる程、それに相応しい盛り上がり、戦いが、ここには描かれています。
強いていえば、ラストがちょっとあっさりし過ぎな気もしないではありませんが、そこをあまりウェットにだらだらと描いても、本作の場合は興醒めなだけでは無くてせっかくの完成度を損なうことにもなりかねないかなと思えば、むしろこれでいいのかもしれません。

スイス独立の英雄といえば、何を置いても真っ先にヴィルヘルム・テル(ウィリアム・テル)の名前が挙げられるところでしょう。
ですが、本作においては、ヴィルヘルム・テル、そしてその息子のヴァルターも、ハプスブルグの圧政に立ちあがった数多の「山の民」の1人に過ぎず、つまり独立の英雄たる者は特定の個人では無く、ハプスブルグとの戦いに身を投じた全ての人々、本格的な反抗が開始される前に、ザンクト・ゴットハルト峠のヴォルフスムントの関所において代官のヴォルフラムにむごたらしく惨殺された人達を含む全ての人々だ、ということが、描かれているように思います。

最後の最後に、作者自身が短いあとがきを寄せています。
そこに、本作の製作(を含む作者のマンガ創作全て)にあたって、筋肉少女帯の「タチムカウ ~狂い咲く人間の証明~」(アルバム『最後の聖戦』収録)という曲が大きなモチベーションになっているということ、同曲の「気分を漫画にすることが」「創作のとっかかりのひとつになって」いて、その「気分を共有できる人々に向けて、今後も作品を作りたいものと、内心念じて」いることが書かれています。

……あぁ、何だか、それ、良く分かるな。

「タチムカウ」については、どんな曲か気になった方は、ネット検索でもして調べてみてください。
いい曲ですよ。

ともあれ、2009年2月の連載開始から約7年をかけて完結した本作、疑いの無い傑作です。

 狼の口 ヴォルフスムント
 8巻

 (2016/11/15)
 久慈 光久
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