「クロニスタ 戦争人類学者」

 2016-11-19
「本館」の更新に先がけた読了本紹介。
戦国武将と同じ名前である柴田勝家の『クロニスタ 戦争人類学者』を、今回は選んでみました。

「自己相」と呼ばれる生体通信技術によって、各個人の認知だったり感情だったりといったものを人類で共有し、平準化された<正しい人>達が暮らす戦争等の争いを根絶した世界が、本作の舞台。
その「自己相」に全地球人類を取り込もうと、管理を逃れて生活をしようとする「難民」を弾圧する共和制アメリカ軍の軍属人類学者シズマ・サイモンが、任務で訪れた南米アンデスで謎の少女と巡り合うことから、物語は始まります。

著者が専門とする民俗学や文化人類学をベースにして、社会と人間いうものを扱ったかなりシビアな物語。
仁木稔の「HISTORIA」シリーズ、特にデビュー作であるシリーズ第1作の『グアルディア』や、何より 伊藤計劃 の『虐殺器官』や『ハーモニー』の影響が顕著にうかがえる、いわゆる「ゼロ年代日本SF」が提起したテーマをきっちりと継承した作品と感じました。

ただし、扱っているテーマの大きさに対して、作品は小さくまとめ過ぎな感があります。
もう少しボリュームがあった方が、キャラクターと物語にもっと深みが増していたかもしれませんが、現状のサイズでは、色々と中途半端になってしまっているように感じました。
アイディアや題材は悪くないのですがも、もう1つ2つ、何か足りないように思えるのです。
それ故に、先に例に出した仁木稔や伊藤計劃の作品と比べると、迫力に欠けるというか、物足りなさが如何ともしがたいところ。
これは、もったいないなぁ。
とはいえ、基本的には最初から最後までかなり面白く読ませてもらいましたし、今後、ちょっと注意しておくべき作家だと思います。

なお、さすがに戦国武将の名をわざわざペンネームにする人も、それを認める編集部も無いだろうから「柴田勝家」というのは本名なのかな(ご両親が戦国好きでそのように名付けた、とか)、そこまで縁起のいい名前でもない気がするけれど、と思っていたら……
どうやら本名は別にある模様。
実は本人もなかなかの柴田勝家ファンで、その風貌や体型が柴田勝家の肖像画にかなり似ているらしいのですが、まぁ、それは余談です。

 クロニスタ
 戦争人類学者
 (ハヤカワ文庫JA)

 (2016/3/24)
 柴田 勝家
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