「スティグマータ」

 2016-09-26
今年の自転車ロードレースも段々と終わりが見えてきましたし、そろそろ積読の中からこれを読んでおかなければなるまいということで、2007年発表の『サクリファイス』から始まった近藤史恵の自転車ロードレース小説第5弾『スティグマータ』を読了したので、今週の、「本館」に先がけて紹介する読了本には、それを選ぶことにしました。

私がこのシリーズを読み続ける理由は、特に説明する必要もないでしょう。
自転車ロードレースを題材にしている、上質な作品だからです。

日本における実業団の戦いを描いた『サクリファイス』。
ツール・ド・フランスとドーピング問題を扱った『エデン』。
読み切り短編として発表していたものなど6編収録した『サヴァイヴ』。
大学の自転車部を描いた『キアズマ』。
それ等につづく本作は、再び舞台をツール・ド・フランスに移して、5年前にドーピングスキャンダルで過去のグラン・ツール優勝実績を全て剥奪され、二年間の出場停止処分を受けて表舞台から姿を消していた過去の英雄が突然の復帰出場をする、という導入から、何故彼が今になってレース復帰を決めたのか、そしてシリーズにおけるメインキャラであるチカこと白石誓は何を思い何を願ってツールを走っているのか、といったことが描かれています。
さらに今回は、シリーズをずっと読んできた人にはそれだけではない楽しみもあって、大いに楽しく読ませてもらいました。

最初に『サクリファイス』が出たのは、それまでずっと一般的な認知度が低いままだった自転車ロードレースが少しずつその存在を認識され始め、芸能人等に自分でもロードレーサーに乗って休日はあちこち走り込んでいると公言する人が出だした頃だったかと思います。
まぁ、その前に2003年にアニメ映画『茄子 アンダルシアの夏』が公開されたりもしていましたが、あれは高い完成度を誇りつつも興行成績は奮いませんでした。
きちんと調べたわけではないですけれども、日本での自転車ロードレース人気が本格的に高まってきたのは、『サクリファイス』の発売辺りが分岐点じゃないかと思うのです。
で、その流れを決定的にしたのが、2013年の『弱虫ペダル』のアニメ化だったかな、と。
2020年の東京オリンピックに向けて、さらに人気が高まって行って欲しいのですが、ただし、多発している無謀運転やそれによる事故だけは、何とかしてほしいところ。

それには、この『スティグマータ』のような、一般に向けたミステリー風娯楽小説で、自転車ロードレースを題材にしてしっかりとした人間ドラマを描いてくれている作品の存在も大いに貢献してくれるでしょう。
実際、非常に面白い作品となっているので、まだ読んだことが無いという人には、シリーズ過去作は文庫化もされていますから、是非ともちょっと手にとって読んでみてほしいと思います。
さらには、更なるシリーズ続編も、期待したいところです。

 スティグマータ
 (2016/6/22)
 近藤 史恵
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