「小説 君の名は。」

 2016-09-10
8月末に公開され、(この「別館」でも以前に感想で書いたように、欠点が無い完璧な作品だとは言いませんけれども)かなり素晴らしい出来だった映画『君の名は。』。
その物語を、監督自らがノベライズした新海誠の『小説 君の名は。』が、今回、「本館」に先がけた読了本紹介に選んだ1冊。

物語の創造や脚本も監督自身が手掛けているのが、新海作品のスタンダードですよね。
それに加え、この小説版は映画の製作と同時進行で執筆されて、公開前に発表されており、かつ、これを書くことで整理されたことがアニメ制作の方にフィードバックされていたりもするらしいので、どちらが原作でどちらがそうではない、というような区分をしてしまうのは妥当ではなさそう。

新海誠は、もともと自分1人だけで自主制作的にアニメを作っていた人で、基本的に様々なことを全てコントロール下に置いて制御しながら映画製作をしているというイメージがあります。
なので、そんな中で平行して小説版も書くというのはどうなんだろうと思って読んでみたのですが……
おお、結構いいじゃないですか、これ。

山深い田舎町の女子高校生と東京都内で暮らす男子高校生とが、互いの意識がしばしば入れ替わってしまうという現象に巻き込まれる。
この、良くある感じの出だしからで始まる物語は、お得意のSF要素も盛り込んで、この2人が直接出会いたくても出会えない理由を描き出すのですが、この辺りが本作の一番のミソでしょう。

正直、1ページ当たりの活字数は少なめですし、小説としてのボリュームは物語に対して薄目です。
こういうストーリーならば、この2倍か、せめて1.5倍くらいあっても良かったと思います。
映画を観た後に読む分にはいいのですが、これを先に読んだ場合には、その分だけ小説としての深みがあまり無いと感じてしまうかもしれません。
その辺りには、映画の製作と並行して書いていた弊害が出ているのかも。

それもあってか、前作の『小説 言の葉の庭』に比べると、物足りなさを覚えてしまったのは否定できないところです。
それでも、ピュアな青春恋愛モノとして、私の中のロマンティストな部分を絶妙にくすぐってくれて、個人的には大いに満足しました。

 小説 君の名は。
 (2016/6/18)
 新海 誠
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