「彩雲国秘抄 骸骨を乞う」

 2016-08-27
本編18冊と外伝4冊で完結となった雪乃紗衣の『彩雲国物語』。
その後日談スピンアウトというか、外伝というか、異聞というか、ともかくそういったポジションになる『彩雲国秘抄 骸骨を乞う』上下巻(角川文庫版)が、今回の、「本館」更新前に紹介する読了本。

ここには、全部で(角川文庫版のみの書下ろしを含めて)7編の短編・中編が収録。
内容は、それぞれに特定のキャラクターに焦点を合わせ、本編中ではまとめきれなかった、描き切れなかった部分を補完するようなものとなっています。

そういう完全にスピンアウトな形ならば、従来通りにビーンズ文庫で最初から刊行すればいいのに、本作は当初、単行本というフォーマットで、ほんぺんとは全然イメージの違う装丁で発表されました。
そんな風にわざわざ別作品のような形にせずともいいようなものですが、しかし収録されている各作品の内容を考えれば、そのような刊行形態になったのにはやはりそれなりの理由があるなと納得できます。
というのも、本作、本編において主人公達の前に最後に立ちはだかる敵役であった旺季と、その腹心の配下達の側に天秤の針が大きく傾いたものになっているのです。
本編終盤時に特に顕著ではありましたが、『彩雲国物語』というシリーズを書いて行くにつれて作者の気持ちが大きく、この旺季に向かうようになって、主人公達よりも余程良い扱いをされるようになっていたというのは、私以外にも多くの人が感じていらっしゃること。
それだけであれば良くある話であって別にかまわないのですが、せっかくの魅力的な悪役に、最高の見せ場としての散り様というものを与えてやれなかった、生き延びさせてしまった、『彩雲国物語』という作品の致命的かつ一番のミスで、そのせいで、非常に残念な作品と感じていました。

この『骸骨を乞う』は、最初から「旺季の物語」に徹しており、結果的に、本編での失敗をこの外伝でフォローしたというような感があります。
しかし、どうせならばこういうことを本編内でもうちょっと上手く見せられなかったのか、という気持ちはやはり拭いきれず、それもあって完全な失地挽回とまでは、行きませんでした。
それに、本編を最初から最後まで、そこからこの外伝、という流れで読んだとすると、キャラの扱いの差に違和感を覚えると思うんですよね。
特に、旺季を持ち上げる為に、本編の準主人公であった劉輝のことを落としているようなところがあるのは、正直、ちょっとどうかと感じずにはおれませんでしたし。
一応、角川文庫版の書下ろしエピソード「秘話 冬の華」で主人公達の方にも多少のフォローは入ってもいるのですが……

ともあれ、これを以って「彩雲国物語」は完全に完結。
あれこれ書きましたけれど、シリーズ全体のバランス等を抜きにして今回の『骸骨を乞う』の内容だけで考えれば、こういう物語は好きだと言えます。

 彩雲国秘抄
 骸骨を乞う (下)
 (角川文庫)

 (2016/2/25)
 雪乃 紗衣
 商品詳細を見る


タグ :
コメント












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
トラックバックURL:

http://pantarheibekkan.blog110.fc2.com/tb.php/1643-0754098e

≪ トップページへこのページの先頭へ  ≫