「放課後スプリング・トレイン」

 2016-08-13
ちょっと久々の、「本館」更新に先がけた読了本紹介です。

「日常の謎」系の青春ミステリー好きの血が騒いでふと手に取ったのが、吉野泉の『放課後スプリング・トレイン』。
第23回鮎川哲也賞の最終候補となったものが、(おそらくは改稿などを行って)書下ろし文庫作品として発売されたもので、ちなみにこれがデビュー作ということです。

福岡の街を舞台に、主人公の少女が通う高校、彼女の周囲で起きる事件。
それを、クラスメイトの付き合っている年上の彼氏の友人として知り合った大学院生の力を借りながら解決する、というのが基本ラインで、表題作ほか、全部で4つの短編からなっています。

フォーマットとしても、内容としても、ジャンルの王道であり、ベタな設定だと言っていいでしょう。
しかし、青春ミステリーというのはむしろそうでなければいけないようなところがあると考えているので、その点では問題無し。
あとは、個々のキャラクターの魅力とか、学生生活をどれだけ生き生きと描けているかとか、細かいエピソードが面白いものになっているか、といったようなところが、私にとっての重要ポイントです。
その点で、ちょっと甘めの採点ではあるのですが、本作は及第点だと思います。

あとがきで作者は「初めて書いた物語の舞台が福岡であったのは、ホームシックになっていたから」と書いています。
なる程、プロフィールを見ると福岡生まれの九州大卒らしく、また、自分の良く知っている場所を題材にして作品を書くのは、デビューを狙っての持ち込みだったり賞への投稿だったりという場合には、物語の舞台にリアリティーが出るという手堅いやり方でもあるでしょうから、それはむしろ選考過程においてプラスに働いていたのかもしれません。
本作が本当に「初めて書いた」作品なのかどうかは、分かりませんけれど、そこは、世に出ていない作品をカウントするのか否かという問題ですよね。

まぁ、いずれにしても、作品を読み、面白かったかどうか、自分の好みに合うかどうかを判断するに当たっては、そこは関係が無い話であり、私としても、別にそこをはっきりさせようとか、そういうことは思っていません。
とりあえず、本作の出来は悪くなかったので、これをシリーズ化した続編か、あるいはまったく別の作品のどちらにしても、次回作も読んでみようかな、と感じた1冊でした。

 放課後スプリング・トレイン
 (創元推理文庫)

 (2016/2/27)
 吉野 泉
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