「カタナなでしこ」

 2016-07-02
今回、「本館」更新前の紹介本に選んだのが、亡くなった祖父の遺品整理の手伝いで蔵の中身を片付けていた女子高生の千鶴が、そこで刀身だけの日本刀を見つけることから始まる、榊一郎の『カタナなでしこ』。

そこから物語は、夏休みの補習授業で教師によって命じられたグループワークの課題に、クラスメートの紗和子、補習仲間の鏡美、音々の3人と共に、その刀の鞘や鍔、柄などの「拵え」を自分達で創作し、刀を仕上げようということを選ぶという、現実にはさすがに無かろうなと思われる展開を見せます。
だからといって現実味の薄い、いかにも作りモノめいた作品になっているかというと、そんなことも無いのが、本作の良いところ。
4人はグループワークを進めて行く過程で、自己のアイデンティティーの確認だったり、一歩前に進むために自分自身をほんのちょっと変えてみることだったり、将来の夢を見つめ直すことだったり、といったようなものを経験して行くのですが、そこをしっかりと描くことで、少女達の成長譚、青春小説として地に足の着いた物語になっていると言っていいでしょう。

彼女等の周囲にいるのが基本的に善人だけというのが多少アレですが……
実際、私の日々の生活から考えても、普段接するような人にはそうそう悪人はいないわけで、これを以って本作のことを非現実的と言うことはできないでしょう。

恋愛要素が多少の彩り程度に抑えられていて、そこを必要以上にプッシュすることなく、あくまで「拵え」を作ることを通じて彼女達が得るものを描くことに軸足を置き続けているのも好印象でした。

榊一郎の著作ということで、もっとラノベ的なテイストのものを想定して読み始めたら、意外にオーソドックスな青春小説になっていたのは想定外の驚きでしたが、いやぁ、これは面白いし、良い作品です。
主人公達と同年代もしくはそれよりやや年下のティーンエイジャーはもちろん、青春小説好きな皆さんにも、是非読んでもらいたい、お薦めモノと思っています。

 カタナなでしこ
 (2016/1/29)
 榊 一郎
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