あぁ、やっぱり……

 2016-06-09
これまで、発売になるごとにその感想をここでも欠かさず書いてきたのが、ファミ通文庫から発売されているから森橋ビンゴの『この恋と、その未来。』(第1巻第2巻第3巻第4巻)。

そこまで毎回書いていたのは、もちろん、この作品のことを面白いと思っているから、というのが第一ですが……
何より、今どきのラノベでは、こういうのは売れにくいだろうなということが危惧されてならなかったからであり、大した効果は見込めないにせよ、このブログで私が本作を採り上げることで、少しでもセールスに貢献できればなと思ったからでもあります。
作品として自分がやりたいと思っていることをやる為か、現在主流となっている要素を入れて萌えの方向に寄せている部分もありましたけれど、基本、精神的な痛みの伴うナイーヴな青春模様を描いている物語ですから。

ラノベがまだ一大ジャンルとして確立されていなかった頃ならば、しばしばあったタイプの、いわゆる「青春小説」的色合いの濃いこういう作品は、しかし、今の時代、今の主な読者層にはあまりウケないだろうなというのは、簡単に想像できます。
おまけに、扱っているのが「性同一性障害」ですから、いくらコメディー要素を導入してみても、どうしたって作品の根底には重苦しさが横たわります。
そういう、「ライト」になりきれない部分は、ラノベが「ジュヴナイル」から「ラノベ」になっていく過程で薄れていってしまったところでもあり、それを敢えてこの時代に前面に押し出している本作は、セールス面では難しいだろうけれど、何とか、作者の満足いくボリュームで完結までたどり着けたらな、と、そんな風に私はずっと感じていました。

しかし、現実はやはり甘くは無い。
先月末に出た第5巻『二年目 秋冬』の「あとがき」に作者自身が書いていますが、本作は、物語の途中で打ち切られることになってしまいました。
急に告げられたのではなく、もともと、6冊目まで書くのは難しいのではないかという予測がなされていた上で、第4巻の売上も伸びず、ここは残り2冊の構成を1冊にまとめて物語を完結させようという編集サイドの提案を、それでは物語として重要な「再会」シーンに至るシークエンスが軽いものになってしまうからと、敢えて完結させずに当初の構想通りの第5巻を出すことを選んだ作者。
その選択を、是とするか、非とするか。
ここは難しいところで、私としても、まだ結論は出ていません。
ただし、ファミ通文庫での第6巻発売は難しいとしても、(非商業作品になりますし、生活もかかっているので他の仕事を優先しなければならないこともあるから、すぐにはできないけれども)何らかの形で完結編である6巻部分は発表する、と作者は宣言しています。
おそらく、それは「なろう」サイト等のネットでの公開になるようですから、限られた人しか入手できない、読めない、ということにはならなさそうなのは、救いとなるところではあります。

これ、長く出版不況が続いている現状を思えば、発行部数の伸びない作品を続けていられないという、ファミ通文庫編集部の判断も、理解できるんですよね。
これまでは扱っていなかった出版社も参入してきたりして、ラノベのレーベルはここ数年で一気に増えていますし、ジャンルとしては活気があって人気コンテンツなのではないかと思っている人もいるかもしれませんが、本当のところ、実情は末期が近づいているのではないか、と私は感じています。
実売データその他の数値から裏付けをとっている話では無いので、絶対にそうだなどと言えるものでは無く、あくまで直感的にそのように感じている、ということなのですが、あながち外れていないのではないかな、と。
ジャンルとしての山は既に過ぎて、縮小再生産に入りつつあったジャンルに、その他で利益を出しづらくなった出版社が、それでもまだある程度は売れているのであれば参入して、小さくなりゆくパイの分け前を少しでももらおうとしている。
今のラノベ界隈って、そういうことになっているんじゃないですかね。
だからこそ、次の一手を模索しようとして、対象年齢を上げての「大人向けラノベ」的なレーベルを起こしたり、ソフトカバー単行本のレーベルを作ってみたりしている。

そういう状態で、『この恋と、その未来。』 のような作品をリリースするというのは、編集部にとっても大きな冒険だったはずで、現状を良しとしないという姿勢の表れでもあったはず、と私は思います。
大ヒットは望めないにしても、こういう作品がある程度の販売実績を出して、まだまだこういうのにも需要があるんだ、ラノベというジャンルには、ここにまだ可能性が残っているんだ、ということが証明できれば、という願いが、込められていたのではないか、とまで書いてしまうと、さすがに妄想のしすぎかもしれませんけれど……
しかし、結果、残念ながらそのチャレンジは商業出版として許容できる範囲の売上という果実すら手にすることはできなかった。
実験作、挑戦作を、赤字になる覚悟でリリースし続けるだけの体力は、今のラノベレーベルには残っていないのでしょう。
打ち切りは、だから、致し方の無いことだと、私としてはそのように受け止めています。
全くの部外者である一読者に過ぎない身なので、内情は一切知らないながらも、むしろ、5冊目まで出してくれたことが、編集部の努力を示しているのではないかとさえ、思っていたりします。

ラノベの現在の流行や方向性と、自分の作風とは合わない。
もともとそう感じていて、本作を、自身最後のラノベだと思って執筆していたそうなので、余計に、中途半端な完結をさせたくなかった。
そう語る作者を否定することは、私にはできません。

なので、長々と書いてきましたけれど、この件に関して言えることは、本当はただ一言、二言しか無いのです。

そう、「残念であり、悔しい」ということだけ。

 この恋と、その未来。
 ―二年目 秋冬―
 (ファミ通文庫)

 (2016/5/30)
 森橋 ビンゴ
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