「誘拐サーカス 大神兄弟探偵社」

 2016-06-11
昨年末に出た、以前に紹介したシリーズの第3作目が、今回「本館」に先がけての読了本紹介に選んだ、里見蘭の『誘拐サーカス 大神兄弟探偵社』。

冒険小説や探偵小説の復権、とまで書くと言いすぎかもしれません。
が、少なくとも作者としては、自分がかつて好んで読み親しんできたそういったジャンルの作品を自らの手で著して世に問うてみよう、という狙いがあって書き始めた作品らしいので、それが順調に巻を重ねてきたというのは、作者にしてみれば嬉しいこと、なのだと思います。

続巻が出るということは作品に一定の読者が付いたからであり、それはまた、ある程度以上の面白さがある(と見込まれる)作品だと予想できるということでもあります。
つまり、書店などで棚を眺めていて「これ、読んでみようかな」と思うか否かの要因の1つには、シリーズ化されているものなのかどうかということが挙げられる、というわけ。
しかしながら、そのシリーズがその段階で既刊が十数冊にまでなっている、というような場合には、それはそれで、面白いのだろうけれども手が出しにくい、ということにもなってしまうわけですよね。
つまり何が言いたいのかというと、シリーズが3冊出ているこれくらいの時期というのは、一般論として、ちょうど、そのシリーズを試しに読み始めてみようかなと思うのには適当なタイミングかもしれないなということ。
まぁ、本シリーズについては、私は1冊目が出た時点から既に、「これは読んでみよう」と思って購入をしていたわけですけれども。

前置きが長くなりました。
前作「暗殺者ソラ」がスケールの大きい話だったのでそれに続く第3巻については一体どうするのか、このまま各エピソードの扱う事件やアクションの規模ばかりが大きくなるインフレーションになるのはいかがなものだろうか、と思っていたこのシリーズ。

そういう側面が無きにしも非ずではあったものの、むやみやたらなことにはならずに済んでいたのは、シリーズの読者としては、ほっとしたところでした。
主人公達の探偵事務所に今回依頼されたのは、アイドルオーディションに絡む女子高生誘拐事件の解決。
犯人と交渉しつつその正体や所在をさぐろうと動く中で、今度は別の誘拐事件が絡んできて……という、どんどんと事件が輻輳して行くようなストーリーです。
例えば事件に政治を絡めるとか軍事を絡めるとか、そういう方向でスケールアップするのではなくて、こういう、別のアプローチでトラブルに複雑さを増して物語の重層感を出していくというのは、少年誌のバトルマンガでよくある「強さのインフレ」的なことを危惧していた私にとっては、嬉しいことでした。

こういう構造、いいですね。

これまでのシリーズ3作の中では、これが一番好きなエピソードかもしれません。

 誘拐サーカス
 大神兄弟探偵社
 (新潮文庫nex)

 (2015/12/23)
 里見 蘭
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