まさか、こんな逆転劇があるとは

 2016-05-30
2016年のジロ・デ・イタリアが終わりました。

今大会については、何から書いたらいいか分からないくらいに、とにかく熱い戦いだったとしか言えません。
が、だからといって何も書かないわけにもいかないので、とりあえず、いつものように、各賞の結果を順番に書いていくことにしましょう。


まずは、総合優勝の証であるピンク色のジャージ、マリア・ローザ。
実は、これを巡る戦いが一番すごかった。
前回に書いたように、第15ステージ終了時点では、総合首位に立ったロット・ユンボのステフェン・クライスヴァイクが2位以下に3分以上の差をつけることに成功していました。
正直、これでもう総合優勝争いは決まったと思ってしまったのですけれど、それも無理はないことだったのではないでしょうか。

しかし、ライバル達は諦めてはいなかった。
再び大きく勝負が動いたのは、今大会最高峰のチマ・コッピを含む第19ステージ。
山岳に強いアシストがいないというロット・ユンボのチーム力の弱さを突くべくライバル達とそのアシストが次々と攻撃を仕掛けました。
その結果全てのアシストを失って丸裸となったクライスヴァイクは、それでもチマ・コッピの頂上まではまだ、アスタナのヴィンツェンツォ・ニーバリや、オリカ・グリーンエッジのエステバン・チャベスといったライバルに喰らいついていたのですが、チマ・コッピから下り始めてすぐ、沿道の雪と霧にカーブでの距離感を誤って落車。
その後、自転車交換等を経て単独で追走を続けましたが、続く山頂フィニッシュの峠ではさすがに力尽きてしまい、盤石とも思えたリードを一気に吐き出したばかりか、代わって首位に躍り出たチャベスからも1分のタイム差を付けられて、一気に総合3位にまで順位を落としてしまったのです。
さらにニーバリは、続く第20ステージでもライバル達のアシストを徐々に削いだ後に、最終山頂ゴールの1つ手前の山岳で満を持してのアタック、その峠で稼いだタイム差を得意の下りで更に広げ、最後の登りも渾身の走りをした結果、何と何と、4分43秒まで行った総合のタイム差をフレンチアルプスの2ステージでひっくり返して、驚きの逆転総合優勝を遂げました。

ちなみに総合2位のエステバン・チャベスとのタイム差は52秒。
自身初のジロ出場であったモヴィスターのアレハンドロ・バルベルデは1分50秒差で3位に、落車によるダメージも大きかったクライスヴァイクは総合表彰台からも外れる4位でレースを終えました。

個人的に応援していたのはバルベルデなので、第14ステージと第19ステージの、標高が2000メートルを超えるような山岳での、コンディショニング的な問題での遅れが無ければ、あるいは、というところもあるのが残念といえば残念です。
しかし、彼の今ジロの目標は最終日の総合表彰台に登ることとステージ優勝(こちらは、第16ステージで獲得しています)ということだったので、彼にしてみても目標をしっかり達成したということで、大成功のジロでしょう。


ポイント賞の情熱の赤いジャージ、マリア・ロッソ・パッショーネは、トレック・セガフレードのジャコモ・ニッツォーロ。
去年に続いての2年連続の獲得です。
ただこれは、エティックス・クイックステップのマルセル・キッテルやロット・ソウダルのアンドレ・グライペルといった強力なスプリンターが、7月のツールや8月のオリンピックのことを考え、後半の厳しい山岳で足にダメージを残さないよう、コンディションを崩さないようにと、ジロを途中で去ったから獲得できたという側面も否定できません。
なので、ニッツォーロとしては今後、キッテルやグライペルをガチンコのスプリント勝負で負かすことを複数回重ねて、彼等が仮にジロを完走していたとしても、最終的にポイント賞に輝いていたのはどのみち自分であったということをアピールしてみせる必要があるかもしれません。
まぁ、とはいえ、彼がドロミテやアルプスの厳しい山岳を乗り越えてゴールのトリノまで走り切ったのは事実であり、そのことを考えれば、そのチャレンジをしていない選手よりも彼が劣っているというようなことは、決して言えないとは思います。
なお、ニッツォーロは最終第21ステージのトリノゴールでゴール前スプリントを制したように見えたものの、ライバルの走行コースを妨害した斜行の反則を取られて降格処分となったので、これも昨年と同様、1勝もしないままのポイント賞になってしまっています。


山岳賞の青いジャージ、マリア・アッズーラは、NIPPOヴィーニファンティーニのダミアーノ・クネゴが最終盤の第19ステージまで保持していたものの、ニーバリが総合優勝を奪取した最後の山岳ステージ、第20ステージで逃げ集団に加わることができず、結局、ここでポイントを一気に加算したチームスカイのミケル・ニエベにこのジャージを奪われてしまいました。
まだ22歳だった2004年にジロで総合優勝をしたこともあるクネゴは、ジャパンカップでも優勝したことがあり、日本でも非常に人気の高い選手で、今回のジロは当初から明確に山岳賞狙いで走っていたので応援している人も(私を含めて)多かったのですけれど、勝負は、やはり簡単には行かないですね。
まぁ、ここは、見事に大逆転をしてみせたニエベのことを称賛しなければならないでしょう。


新人賞の白いジャージ、マリア・ビアンカは、エティックス・クイックステップのボブ・ユンゲルス。
厳しい超級や1級の山岳ではニーバリやチャベス、バルベルデ等について行けずに遅れてしまうところもありましたが、自分なりの店舗を刻んで大崩れはせずにそこをしのいだ結果、2位以下にも大きな差をつけ、総合でも6位に入るという成果を上げました。
ちなみにチームはこの大会でステージ4勝、マリア・ローザも6日間着用しているのに加えて、ユンゲルスのこの新人賞と総合上位の獲得という結果なので、この大会、大成功だと言えるでしょう。春先のクラシックレースでは、途中までいい展開を作っておきながら勝てないということを繰り返していたクイックステップも、ここでそのマイナスをきっちり取り返してきたということになりますね。
さすが、「曲者集団」と呼ばれるだけのことはあります。


なお、惜しくも山岳賞を逃したクネゴのアシストとして出走していた今大会唯一の日本人選手、山本元喜は、アシストとしての役割をそれなりにこなし、1回は逃げ集団に加わったりもしつつ、無事に全日程を完走しました。
彼はこれがグラン・ツール初出場ですし、あくまで第1目標は経験を積みつつ完走を目指すことにあったので、逃げも見せたことを考えれば大成功と言えるでしょう。
ただし、これがこの先のキャリアに繋がるかどうかは、これから他のレースでどんな走りをできるかとか、チーム内での人間関係がしっかりと作れているかとか、そういうところも関わることなので部外者の私が一概に推測できることではありませんけれど、まずは、良かった。

以上が、今年のジロのおおざっぱな結果です。

最後に、ロット・ソウダルのアダム・ハンセンについても触れておきましょう。
彼はこのジロも無事に完走していますので、これで、グラン・ツールの連続出場&完走記録は、14回にまで伸びたことになります。
つまり、約5年もの間、ジロもツールもブエルタも欠かさず出場して、ゴールまで走り切っているわけですが、彼の凄いのは、ただゴールまで走っているだけではなくて、その過程でアシストとしても活躍、個人的にも幾つも見せ場を作り、2013年のジロと2014年のブエルタではステージ優勝までしているところにあります。
今年のツールやブエルタも、ほぼ間違いなく出場してくるでしょうから、更なる記録の拡大にも、期待したいと思います。


しかし、それにしても、ニーバリの大逆転勝利は凄かった。
「凄い」の一言で片付けてはいけないような気もしますが、他にどう表現していいのか思い浮かびません。
このジロ・デ・イタリア第99回大会は、まさに、歴史に残る大勝負、長く語られることになる大会になったのではないでしょうか。


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