「有頂天家族 二代目の帰朝」

 2016-04-16
「ここぞ」という時に読む楽しみにしようと思って大事にとっていたら、いつのまにか発売から1年以上が経過してしまった、森見登美彦の『有頂天家族 二代目の帰朝』。
今回は、これを、「本館」更新に先がけての読了本紹介に選んでみました。

サブタイトルにある「二代目」とは如意ヶ嶽薬師坊こと赤玉先生の英国に出奔してしまっていた息子にして跡継ぎのこと。
これは、そんな彼が京都の町に帰ってきたことをきっかけに巻き起こる、狸と天狗、そして半人半天狗的な存在である弁天との物語です。
アニメにもなった『有頂天家族』の待望の続巻であり、内容的にも前作を受けて更に物語が展開して行くものになっているので、第2部である本作を読む際にはその前に第1部を未読の方やその内容を忘れてしまっている人は必ず、単行本でも文庫でもいいですが、第1部を読んで予習をしておくべきでしょう。

作者である森見登美彦が長期スランプ中なので2007年から2009年にかけて発表されたこの第2部が単行本としてまとめられるのに約6年もの月日がかかってしまったわけですが、実際に刊行された本作の内容は、その「スランプ」さをほとんど感じさせない安定の面白さ。
読んでいて特に興味深かったのは、主人公である矢三郎を始めとする下鴨四兄弟を取り巻く人間関係の変化です。
愛すべき毛玉達の世界に花が咲くというか、色恋の面でも色々と起きているこの第2部。しかし全体として話の方向は第1部と同様に、親から子へと受け継がれていくもの、世代の継承、そして家族、というところにあると感じました。

基本、ドタバタのユーモア小説なのですけれども、そんな中に心にグッとくるものがあるのが、この作品の素晴らしいところ。
「面白くてやがて愛しい」というか、森見作品の中でもとりわけジーンとさせられるのは間違いありません。

難点を挙げるとすれば、本作が全3部作という構想に基づいて書かれていること。

つまり、460ページ超の物語の中には完結作たる第3部に向けての布石が仕込まれていて、それがどのような展開を産むのか、そして二代目と弁天との関係がどうなるのかが気になって気になって仕方が無くなるのです。
なかなかのスランプで苦しんでいるのは重々承知しておりますが、ここは、森見登美彦先生にはできる限り早くこの続きを書いていただきたいところ。

おそらく、全国の森見ファン、『有頂天家族』ファンの全員がそのように思っていることでしょう。

 有頂天家族
 二代目の帰朝

 (2015/2/26)
 森見 登美彦
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