「彩菊あやかし算法帖」

 2016-04-09
江戸時代、常陸国牛敷藩という架空の藩を舞台に、下級武士の娘が算法を武器に妖怪と対峙する、というのが、今回「本館」更新前の紹介本として選んだ、青柳碧人の『彩菊あやかし算法帖』。

出世作である『浜村渚の計算ノート』シリーズを時代小説に落とし込んだ、作者自身による二番煎じなのかという第一印象を持たずにはおれない粗筋であり題材です。
編集者がそのように要望してきたのだとしてもこういう作品を書くというのはどうなのかなと思ってページをめくってみると……
これは予想していたのとはちょっと違うタイプの作品でした。

読み始めて最初に思ったのは、はたしてこれを「小説」と呼んでいいのかどうかということ。
形式としてはもちろん「小説」となっていますし、架空の人物が架空の舞台で架空の日々を送っているという、これ以上ないくらいにフィクションになっています。
ただ、ストーリー性が薄いというか、メリハリに欠けて盛り上がりが乏しいというか、つまり、「物語」になっていないと感じられたのです。

本作には全部で6つのエピソードが収録されています。
とはいえ、フォントや行間が大きく、また上下左右に取られている余白も広いという、最近よく見かけるページデザインになっているので、例えば50ページ程を要しているエピソードであっても、その内容的なボリュームはそんなにありません。
それが「物語」の薄さを産んでいる一因なのは確かです。

それに加え、個々のエピソードの構成についても、クイズやなぞなぞ、パズル的に楽しめるような数学の命題をそれぞれ1つ採り上げているのはいいとして、その命題の説明をすることに大きくリソースを割いていて、ストーリーの部分がおざなりになっているのではないかというようにも思いました。
これは小中学生くらいの子供に数学への興味を持ってもらう為の作品で、だからパズル的な楽しみの出来るような数学的命題を書くことに注力されていて、「物語」はその目的の為のお飾り要素なのだと解釈すれば納得できなくは、ありません。
そういう作品も、またアリだよね、とは私も考えるのですけれど、それにしては、掲載誌が学習雑誌の類では無いんですよね。

うーん……申し訳ないけれど、ちょっと微妙。

 彩菊あやかし算法帖
 (2015/10/3)
 青柳 碧人
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