「ヴァリアント・エクスペリメント」

 2016-02-20
あやめゆう の『ヴァリアブル・エクスペリメント』は、前作『夜を歩けば』(全3巻)と世界観を一にする1冊完結の作品。
ジャンルは「現代日本を舞台にした異能バトル」モノで、これは前作を刊行した際に、その宣伝文句の中に「異能バトル!」というフレーズを目にした作者が、自分は「異能バトル」モノを書いてはいないと大いに焦った、その焦りが、この作品の執筆動機になったのだそう。

その所為かどうか、本作は全編を通してバトルに次ぐバトル。
もういっそやり過ぎなくらいにバトル漬けの物語になっています。
しかも、地下闘技場での違法格闘大会云々というようなものではなくて、無人島を舞台にした異能力者どうしの殺し合いという、まさしく井上淳哉の『BTOOOM!』か高見広春の『バトル・ロワイアル』かのような設定で、人が死にまくるし、主人公も多くの命を奪って行くという、好き嫌いの大きく分かれそうな内容。

これで主人公が、人を殺すことに対する戸惑いだったり苦悩だったりを覚えていれば、読み味も違っていたのでしょうが……
さにあらず、今作の主人公は(いや、今作の主人公も、と書くべきか)読者の共感や理解を得ようとは一切していない設定、そこに自己を投影して読むというようなことを端から拒絶しているようなキャラになっています。
それが、また、この作品の魅力であるとも言えるのですけれど。
とはいえ世の中は広いですから、この主人公にシンパシーを感じて読む人が全くいないことはないのかもしれません。
でも、うーん、そういう人とはお近づきになりたくは無い、ですね。

それなりに面白かったのですが、あまり大声で「これ、面白かったよ」とは言いにくいタイプの作品です。
なので、ここに採り上げておいてなんですが、あまり人にはお勧めしづらい、かも。
本当は、これがある程度の売上を出せないと、作者の次回作の出版に影響が出るんじゃないかということが、結構心配になってもいるのですが……。

 ヴァリアント・エクスペリメント
 (2015/05/22)
 あやめ ゆう
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