「八百万の神に問う 4 冬」

 2016-01-17
四季をサブタイトルに持つ4部作が、多崎玲の『八百万の神に問う』。
これは、漢字、言葉を題材にちょっと和風のテイストも取り入れたファンタジー小説です。
その完結編である『八百万の神に問う 4 冬』を、今回は「本館」更新に先がけた読了本紹介に選んでみました。

様々な事情で生きていることが辛くなった人々が集う、「楽土」が舞台となっている本作。
何かを失くした人々がそれを取り戻す。
あるいは傷を負っている人々がその傷と向かい合い立ち上がって歩き出す。
そういったことが作品を通じてのテーマと言っていいのかなと思います。

この作品は終始、何か大きな事件や戦いがおきてそれが原因でどうこうなるということは無く、基本、淡々とした地味目の話が綴られています。
いわゆる萌えキャラが出てくる等の、ラノベ的な要素もありません。
なので、作者自身が「あとがき」で「私が書く話は万人受けする物語ではありません」と書いているように、セールス的にあまり振るわないようなタイプのものかもしれません。

なお、この「あとがき」では上記部分の後に作者が自身の心情を吐露しています。
その文章から伝わってくる深い苦悩を見れば、本作は、おそらくこれまで発表されてきた過去の作品と比べても、作者の生な感情、迷い、孤独感、憤り、悲嘆、そういったものが物語やキャラクターに投影されているものになったのであろうなと察せられます。
「出会いの<春>」から「別れの<冬>」まで1人の少年の成長を描いていると考えれば、本作のストーリーについて一本の背骨が通るのですけれど、そんな彼を見守り導くもう1人の主人公は、あるいは作者自身の分身なのかもしれません。
その分、物語としては詰め切れていない部分もあったように思いますが、それも含めて、面白く読ませてもらいました。

本作のラストシーンを描いたことで、多崎礼さんが自身の葛藤から少しなりと解放されていれいいのにな、と願っています。

 八百万の神に問う 4 冬
 (2014/4/24)
 多崎 礼
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