「さびしがりやのロリフェラトゥ」

 2015-11-08
そのタイトルと表紙イラストだけ見れば、よくあるタイプの萌え小説かなと思わせられるのが、今回「本館」更新前の読了本紹介に選んだ、さがら総の『さびしがりやのロリフェラトゥ』。
しかし、実際の内容はそういうものとはちょっと、いや、結構違っていて、かなりシリアスで重いテーマを持つものとなっていました。

これは、作者の言葉を借りるならば本作は「主観と主観のすれ違いと重ね合わせによって、大切な何かを描きだそうとしたお話」です。
つまり、1つの出来事を4人の異なる登場人物の視点から見ることで、複層的に物語を描いた作品なのですが……
もうちょっと分かりやすく言うならば、4つの章ごとにそれぞれ別の語り手が、ある事件についてそれぞれの視点から語る構造になっている作品ということになります。

事物事象をどのように認識するかということには、どうしてもその人の主観というフィルターがかかるもの。
例えば、ある人からは「A」というように見られることが、別の人には「B」に見えていたり、さらに別の人には「Z」に見えていたりするというのは、良くあることですよね。
本作はそのことを使い、第1章で語られていたものに対して第2章では新たな事実を付け加えてその位置づけを大きくズラし、第3章では別の要素を明らかにしてそれまでの認識をひっくり返し、そして第4章では全てを総括するようにして更なる真実を開示して行くという手法を採っています。
かなり緻密に設計されており、読んでいてかなり刺激的でした。
ビターエンドなのでハッピーエンド好きな人にはキツいかもしれませんが、こうなるしかないだろうなというラストも気に入りましたし(ただ、それを付けてしまう気持ちは分からなくはないものの、作品の完成度から考えればエピローグはいらなかったような気もします)、傑作と言っていいモノになっていると思います。

ガガガ文庫というのは、こういうあなどれない作品をちょこちょこと出してくるレーベルなのですが、こういう編集方針は、これからもずっと続けてほしいものです。

 さびしがりやのロリフェラトゥ
 (2015/4/17)
 さがら 総
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