「モーダルな事象 桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活」

 2015-10-22
1994年に『石の来歴』で芥川賞を受賞し昨年には『東京自叙伝』で谷崎潤一郎賞を受賞、その他にも幾つもの賞の受賞歴を持つ大御所作家の1人が、奥泉光。
私が今までに読んだことのある彼の作品は 『鳥類学者のファンタジア』 1冊のみなのですが、その1冊が非常に印象的で面白かったこともあって、いつか他の作品も読んでみたいと、ずっと思っていた作家の1人です。

今回、「本館」更新前のどくりょ本紹介対象に選んだ『モーダルな事象 桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活』は、そんな彼が2005年に発表したミステリー小説。
タイトルからは、なんだかおしゃれなアーバンライフを描く、それこそスタイリッシュな小説かなにかのように受け止められるかもしれませんが、実際には、これはそういうタイプの作品ではありません。

主役は、無名の童話作家の遺稿をきっかけに殺人事件に巻き込まれることになる、大阪にあるしょぼくれた女子短大で国文学の助教授(現在の准教授)をしている桑潟幸一(通称「桑幸(くわこう)」)と、探偵役のマイナーなジャズシンガー北川アキ。
副業としてライターをしている関係でアキはこの事件との接点を持つことになるのですけれど、彼女が、はたして犯人が誰なのか推理をする素人探偵まがいのことをやる動機は、単なる好奇心からという、それってどんなものなのよ、というようなもの。
作中でアキとその元夫である諸橋倫敦が、好奇心から好き勝手に推理を言い合っている姿には、中井英夫の『虚無への供物』の匂いを感じます。
おそらく、奥泉光は本作をアンチミステリーの名作として名高い「虚無への供物」へのオマージュとして執筆したのでしょう。

600ページ弱とボリュームはたっぷりながら、ユーモアたっぷりの文体でしたので軽快に(ちょっと笑いながら)ページを読み進めることができました。
なかなか楽しく読ませてもらえましたし、ちょっといい作品だと思います。

 モーダルな事象
 桑潟幸一助教授の
 スタイリッシュな生活
 (文春文庫)

 (2008/8/5)
 奥泉 光
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