「船を編む」

 2015-06-29
「本館」更新前の読了本紹介に今回選んだのは、ずっと文庫落ちを待っていた 三浦しをん の『船を編む』。
2012年本屋大賞の受賞作ですし、翌年には石井裕也が監督し松田龍平の主演で映画にもなった有名作品ですから、ご存じの人も多いでしょう。
私自身も、あちこちで評判の良さを耳にしていましたし、新しい国語辞書を編纂しようとしている編集者の物語、という枠組にも大いに興味を惹かれていました。
とはいえ、単行本を買うまででもないか、と感じていたのと、映画化された本屋大賞受賞作ですから、どうせ遅からずに文庫になるだろうと考えて、文庫版の発売まで購入を控えていたのです。

で、いざ実際にそれを読んでみてどうだったのかということなのですけれど……
一言で書くならば、「なるほど、これは確かに評判にたがわぬ面白さだった」ということに尽きるでしょう。

辞書というのは一朝一夕ではできませんし、本作のような辞書編集部を取り巻く社内状況があれば、実際に商品が発売となるまでに10年以上の歳月を要することになるのも、無理のないことだろうとは思います。
その上で、本作の目指すのが、「1冊の辞書を産み出すことに情熱を燃やす不器用な人々を描いて行く群像劇」であるならばそうもなるかなというのが、作中における時間経過の幅が広いということ。
具体的には、物語の始まりからラストシーンまで、15年ほどが過ぎていることになります。
それは作中の各エピソードの間に相当の時間が経過している状況を産んでいて、それが本作にちょっと引いた視点からのストーリーテリングという印象を与えていました。
その、やや抑制気味なテイストがここではプラスに働いているとも思っています。辞書が生まれる、その過程を俯瞰的に見ている感じ、と言えば、比較的近いかな……?

不満らしい不満ではないのですが、唯一物足りなかったのは恋愛要素の部分です。
とはいえこれも、客観的には十分にボリュームが割かれていると言っていいレベルでしょう。
要は私の個人的な好みの問題で、もっとベタ甘な感じがあっても良かったかな、と思ってしまったのは、有川浩辺りに毒され過ぎかも。

 舟を編む (光文社文庫)
 (2015/02/25)
 三浦 しをん
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