「ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち」

 2015-02-02
「本館」の「読む」でも紹介している、仁木稔の2004年のデビュー作、『グアルディア』。
そこから、『ラ・イストリア』、『ミカイールの階梯』と続いてきた「HISTORIA」シリーズの4作目が、昨年4月に発売となった『ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち』。

今回、「本館」に先がける読了本紹介には、発売から9か月間、積読状態で放置してしまっていた、この作品を選んでみました。

本作はシリーズ初の短編集です。
朱録されているのは、表題作「ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち」、「はじまりと終わりの世界樹」、「The Show Must Go On!」、「The Show Must Go On,and...」、「...'STORY' Never Ends!」の、全5編。
タイトルで分かるように、後半の3作品はまとめて一つの作品としても差し支えなく、ならばこれは、2つの短編と1つの中編が収録された本と言ってもいいのかもしれません。

本作の収録作のうち、悪条件の労働を人間に代わって引き受ける人口生命体“妖精”が社会に浸透しつつある時代のアメリカで、妖精排斥運動を行っている主人公が、変種の狐を連れた少女と出会うという「ミーチャ~」は時代設定が2001年ということ。
つまり、これまでの「HISTORIA」シリーズでは、最も古い時代が描かれています。
そして「はじまりと~」以降のエピソードは、この“妖精”がやがて亜人と呼ばれるようになり、彼等の犠牲の上に立つ「絶対平和」が確立、その「絶対平和」にもやがて翳りが見えて……という流れを追うという構成です。

デビュー作であり、シリーズの年表上において今のところ最も時代を下ったエピソードである、西暦2643年の中南米で異形の者達の愛憎劇を濃密に描いた『グアルディア』とリンクしていく要素もあちこちに顔を出し、なる程、つまりそういうことだったのか、と、うならされることも多かったこの1冊。
これまでは架空のディストピア未来史モノとして認識していた「HISTORIA」シリーズだったのですが、それは間違いで、実はこれは歴史改変モノであったということを、今回、これを読んで理解しました。

本作の重要な要素の1つにもなっている「人間性」というものに対する描写は、かなり辛辣、刺激的かつ暴力的。
ですので、これをして拒絶を示す人もいることでしょう。
本作も含め、「HISTORIA」シリーズは個人的には大いにお薦めの作品なのですが、そういうところもあるので、万人には進められない、かな。

ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち
(ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

(2014/04/24)
仁木 稔
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