「黙示録」

 2014-12-08
発売直後に買っておきながら実際に読むまでに1年以上の月日が経過することとなってしまった、池上永一の長編小説、「黙示録」。
今回は、日本の薩摩藩と中国の清王朝との間で独立を保つために琉球王朝が行った外交政策のキモとしての「芸能」に
焦点を合わせた、この作品を、「本館」更新前の読了本紹介に選んでみました。

時代的には、琉球王朝末期を描いた作者の別作品「テンペスト」よりも遡り、1713年から1752年の尚敬王の時代が、本作の舞台。
正直、読み始める前は、また琉球王朝モノか、と思ってしまっていたところもあります。
そこに「やや食傷気味の気持ち」があったからこそ、こうして読むまでにこれだけ時間がかかったのかもしれません。

が、そういう側面は確かにあれども、いざページを捲り始めると、やはり池上作品は面白い。
それも、一旦物語が軌道に乗りだしたらもう本を閉じることができないような、中毒性の強いジェットコースター的面白さです。

1人の天才的な琉球舞踊家が階級的にも経済的にも底辺の暮らしから、野心のままにのし上がっていく様。
そしてそんな中で味わうことになる天国と地獄、権勢と凋落、その波乱万丈の人生。
それを、文化的に爛熟期を迎えんとしている18世紀前半の琉球の政治と絡め描きだす。
それが本作のストーリーのアウトラインです。

徳川政府への使節団の正使である與那城王子や、薩摩藩の若侍などのキャラクター造形その他、池上作品らしいかなり無茶な設定や展開が本作でも見られます。
ですが本作においては、原則的には歴史モノという枠を逸脱せずに、物語は進んでいっています。
その分だけ、綺麗にまとめてきたな、という印象が本作読了後に残りました。
文芸としてはそれで正しいのかもしれませんけれど……
どうせならば、そういう、収まりの良さとは無縁の徹底的な破天荒さを池上作品には求めたくもあります。
あくまで個人的な感想ですけれども、この辺りは少々残念かもしれません。

しかし、そういうものを差し引いてなお、この『黙示録』が非常に優れたエンターテインメントであることに疑いはありません。
読書の楽しみ、物語の楽しみを堪能できる、お薦め作品です。

黙示録黙示録 (単行本)
(2013/09/25)
池上 永一
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