「ヴァスラフ」

 2014-10-20
今回、「本館」更新に先がける読了本紹介として選んだ、1998年に発表された高野史緒の『ヴァスラフ』は、「本館」の「読む」で紹介している『ムジカ・マキーナ』でデビューした彼女の長編4作目。
ジャンルとしては、お得意分野である歴史改変サイバーパンク小説になります。
ちなみに、タイトルの「ヴァスラフ」とは何かというと、これは、ヴァスラフ・フォミッチ・ニジンスキーのこと。

ニジンスキーと言われても、それが誰なのかピンと来ない人もいるでしょう。
きちんと書くと長くなってしまうので、ごく簡単に説明すると、20世紀初頭の凄く有名なバレエダンサーです。
興味のある人は、ネットでも図書館でも、ちょっと調べていただければ、それだけで割と簡単に色々な情報を得られるるかと思います。

そんなニジンスキーを、実際の肉体ある人物ではなく、帝政ロシア末期に「ロシア帝国コンピューター・ネットワーク管理省」が、日露戦争の敗北と革命の足音等に弱体化する帝国の威信を全世界に広くアピールするべく開発したヴァーチャル・リアリティーのダンサーである、という位置づけにしたのが本作のミソ。

ちなみに後書きによると、これはもともとは作者が、高校時代に書いた短編だったのだそうです。
そこから幾度かの改稿を経た第8稿にあたるという本作は、ネット上のプログラム、データに過ぎないはずの「ヴァスラフ」(=ニジンスキー)に魅せられてしまった人々の、葛藤などを描いていて非常に面白く読ませてもらいました。

一番最初の短編版でもそういう設定だったのか、どこかで物語が変質して行ったのかは分かりません。
けれども、そうして大切に温められてきた結果、これだけのモノを読ませてくれることになったというのは、一読者としては実に幸せなことです。
これはおよそ16年前の小説ですけれども、今でも決して古くなってはいないと感じられるのは、それだけ本作が「力」のある作品となっている、というように考えてよいのでしょう。

ただ、これだけ面白いもに現在は絶版なんですよね。
なので、これを読みたいなと思った方は、私のように古本で購入するしかありません。
それは、いかにも残念でもったいないことです。

ヴァスラフヴァスラフ
(1998/10)
高野 史緒
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