「ジェノサイド」 上下巻

 2014-06-22
「本館」に先がける読了本紹介として今回選んだのは、2011年に発売されたハードカバー版が「このミステリーがすごい! 2012年版」で第1位となったり、山田風太郎賞や日本推理作家協会賞を受賞したりした作品、高野和明の『ジェノサイド』。

そのような実績があるのに加え、これは面白い、と各所で話題になってもいたので、文庫になったらぜひ読もうと思っていたのです。
アフリカ中央にあるコンゴ民主共和国の密林深くで発見された、新たな致死性ウィルスの拡散を防ぐべくアメリカ合衆国が秘密作戦を発動させる、という導入部からは、パンデミックを題材にしたパニック小説の気配が感じられたのですが……なるほど、そういう物語の入り方をしておいて、そこからこう持ってくるか。
事前に思っていたものとは話の流れが違いましたが、これはこれでアリですね。

とはいえ、本作、手放しでほめられる作品になっていたかと言えば、少々微妙だったりします。
サスペンスものとしての話の流れは上等で、語り口も読み手を引き込む力があって良かったのですけれども、細かいところでちょいちょいと、それが本当にここに必要か、というような政治的メッセージが入ってきたり、登場人物の役回りや基本設定に疑問を感じるところがあったりして、本作を読んでいる間ずっとその辺が気になって仕方がありませんでした。
作中に政治的メッセージを挿入することそれ自体を否定するつもりは無いのですが、本作の場合は、そのやり方がスマートでは無かったという印象です。

例えば福井晴敏の一連の作品のように、作品の題材やテーマと不可分に密接に関係していれば、主張の内容に賛同できるかどうかはともかくとして、多少露骨にイデオロギーを語られても、それはそれで、もともとそういう作品なのだからそんなものだろうと思うのですが、前後の脈絡からの必然性が無い状態で唐突に挿入されても……。
そういうところが残念だったので、今一つ物語に浸れなかった感があるのが、いかにももったいない。

事前の期待が大きかっただけに、せっかく面白い題材と展開なのにと、読後がなんとなく複雑な心境になってしまった、そんな作品でした。

ジェノサイド 上 (角川文庫)ジェノサイド 上
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(2013/12/25)
高野 和明
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ジェノサイド 下 (角川文庫)ジェノサイド 下
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