「聖夜」

 2014-06-15
以前に「本館」でも紹介した『第二音楽室』に続く「School and Music」シリーズ第2弾の『聖夜』が、今週の「本館」に先がけて紹介する読了本。

4つの作品が収録されている短編集だった前作と違い、文庫本にして約200ページの1作品のみが収録されています。
とはいえ、1ページ当たりの活字量が少ないデザインなので、本作のことを「長編」と呼ぶべきなのか、それとも[中編」と言うべきかは微妙なところ。
ただ、昔から分厚い本を多く読んでいる関係で、私の中における「長編」の定義はかなりズレていますので、世間一般的には、これは「長編」と呼んでも一向にさしつかえないのかもしれません。

そんな余談はさておいて、『聖夜』です。

学校生活と音楽を共通テーマにした連作シリーズである「School and Music」の中では、これが一番面白かったと思います。
また、一番「青春小説」になってもいるのではないか、とも感じました。

そんな本作の主人公は、牧師の息子として生まれキリスト教系の私立高校に通う少年。
まだ幼い自分を捨てるようにして浮気相手とドイツへ渡った母への屈折した愛憎と、全てに正しくある父への反発にもがく主人公。
そんな彼が、まだ両親と自分が幸せに暮らしていた小さな頃から触れていたオルガンで、母の好きだったオリヴィエ・メシアンの曲を発表会にて演奏すべく練習することを通じて、精神的に成長していくという物語です。

前述のように、まさしく正統的な「青春小説」そのもの。

ここに、部活の後輩である女子生徒や、洋楽好きなクラスメイトなどが絡むという王道的な展開が、物語に深みをもたらしています。
作中で明確には書かれていませんけれども、約3,000円でレコードを買うという描写とか、作中に登場するスティーリー・ダンやELPのアルバムタイトルからするに、おそらく時代は1970年代終盤あたりの模様。
今現在の日本、学生たちではなくてそういう時代が舞台だからこそ,、ういう話になった側面は、あるのかも。

いいものを読んだな、という感じです。

聖夜 (文春文庫)聖夜 (文春文庫)
(2013/12/04)
佐藤 多佳子
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