「小説 言の葉の庭」

 2014-05-18
2013年に公開され、私もこの日の「別館」で感想を書いた新海誠監督の劇場中編アニメ『言の葉の庭』。
この作品を、原作と脚本も担当していた新海誠自身がノベライズした小説版を購入しました。

今回は、これを「本館」更新前の読了本紹介に選んでみました。

脚本家や監督が自分の手掛けた作品のノベライズを担当した場合に、内容自体は面白いのに小説としては微妙になってしまうということは、しばしば見受けられます。
脚本を書く技法であり作法と、小説のそれとでは違いがあるので、これはやむを得ないことです。

そこで本作ですが、作者後書きによると、そもそも新海誠という人は小説を読むのが好きで、本人いわく小説に片想いをしているのだそう。
今回のノベライズにあたり、そんなわけで彼はちょっとした意気込みと共に書きだしていたようで、その成果はちゃんと出ていたのではないかと感じられました。
本人は自身の力不足を痛感する結果となったと認識しているようですけれども、ひとまずこれくらいできていれば、まずまず及第点としても良いような気がします。
無論、理想は理想として、大事に保持し、目標とすべきものではありますが。

『言の葉の庭』というアニメ作品は新宿御苑を主な舞台として、ハンドメイドの靴職人を目指す高校1年の少年と、平日朝から仕事をさぼっているらしき年上の女性との交流を描いた作品で、ロマンチックであり、センチメントでもあり、小説化するにはかなりの素材と言えます。
ただし、しとしとと降る雨の日の御苑に漂う空気感、池に広がる雨滴の波紋、梅雨時の鈍色の雲を通して主人公等に降り注ぐ陽の具合等々、情景に2人の気持ちを語らせている部分も多く、それをどのように文章化するのかが、勝負の分かれ目となるところでしょう。

今回、新海監督はアニメ版に比べ登場人物それぞれに設定を付け加え、新たなエピソードを加えることで、物語としての深みを増すという方法を採っています。
それは、既に映画を観ている私のような読者でも小説を楽しめるように、という心遣いもあってのことのようですが、その狙いは成功していると思います。

結果、本作は1篇の青春小説として、なかなかのレベルの作品となっていて非常に面白く読ませてもらいました。
映画には無かったラストシーンも良かったですし、アニメ版と合わせて、お勧めです。

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(2014/04/11)
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