「少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語」

 2014-05-12
「少女○○」もしくは「○○少女」というタイトルで私が思い出す小説と言えば、三雲岳斗の『少女ノイズ』や夢野久作の『少女地獄』、青柳碧人の『希土類少女』他、列記しなかったものも含め、かなり印象的なものばかり。
更に、今やネーミングとしては安直とも言えるだけに、これに類するタイトルの作品に対しては、個人的な評価のハードルが上がりがちになってしまいます。

そんな中、帯の綾辻行人や乙一の絶賛コメントが大いに気になったので買ってみたのが、この『少女キネマ』。

本作のジャンルとしては、森見登美彦等に代表されるような大学を舞台にしたユーモア調の青春小説というところ。
そうなればこれはもうお約束でもあるのですが、主人公の周囲にいる友人、先輩は変人ばかりです。

そういうメンバーが繰り広げる、バカバカしくも時にしんみりとさせる日々を描いて行くというのであれば、普通の大学青春モノということになります。
本作の場合はそこに、「本気で創作活動を行おうとすれば宿命的に直面することになるだろう障壁」というものがストーリー上の大きな要素として関わってくるのが、大きな特徴となっていると言えるのではないでしょうか。

では、その障壁を乗り越える為に、あるいはそれを突破する為に、表現者は何をするべきなのか。
そもそもその障壁を超えることは、絶対に必要だと言えるものなのか。
思い描き胸に抱いている高い理想と、現実の自分自身との間にあるギャップを、いかにして解決していくべきなのか。

自分は作品を通じ何かを表現するような、そんな者ではないと考えている主人公も、等しくこの苦しみを味わうことになるということで、それが本作にビルドゥングス・ロマンスのような要素をももたらしていると言っていいでしょう。
つまりそれは、本作が古典的な青春小説としての側面も持っているということに、他なりません。

綾辻行人は、本作の面白さ、切なさ、謎解きなどの驚き、感動などに、若い書き手の勢いと情熱を感じ、乙一は読了後に放心状態ですごして、自分が死んだ時には本作を棺桶に入れてほしいと思っていると言う。

その2人のコメントと私のコメントとを同列に扱うのもどうかとは思いますが、しかし、ここは私も声を大にして言います。

この『少女キネマ』はそれを読んだ人に非常に幸せな読書体験をもたらす傑作です。

少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語 (単行本)少女キネマ
或は暴想王と屋根裏姫の物語
(単行本)

(2014/02/27)
一 肇
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